福島県二本松市の岳温泉で、温泉ホテル「mt. inn(マウントイン)」が2026年7月20日にリニューアルオープンしました。飲食だけを包括するのではなく、温泉、焚き火、散歩、地域の物語、スタッフとの会話までを滞在の流れとして届ける「体験型オールインクルーシブ」を掲げています。40室という規模を生かしながら、館内と安達太良山、温泉街を結ぶ今回の刷新を、宿泊事業者の実務に役立つ視点から整理します。
観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)』では、観光白書・観光動向を考える際に、地域資源を単体で見せるだけでなく、受入環境や周辺事業者との連携まで含めて磨き上げる視点が示されています。今回の発表も、施設の魅力を地域での過ごし方や移動導線と結びつけて伝える点で、宿泊事業者が滞在価値を組み立てる参考になります。

本記事のポイント
- 「STAY SLOW」を新たなコンセプトに据え、ロビーや屋外空間を滞在体験の拠点へ刷新しました。
- ドリンクや食事に加え、焚き火、早朝散歩、温泉リトリート、夜語りなどをつなぐ体験型オールインクルーシブを本格始動します。
- スタッフが宿泊者に合う過ごし方を案内し、館内だけで完結させず、岳温泉や安達太良山へ送り出す地域の拠点を目指します。
発表内容の整理

mt. innは、1989年築の温泉宿を一部改修し、2019年に開業した施設です。2022年には全40室のうち洋室20室を改装し、今回のリニューアルではロビーをはじめとする共用空間と屋外空間、滞在プログラムを大きく見直しました。
新設・改装された主な場所は、シグネチャーカフェ・バーを備えたロビー、芝生広場と大型円形焚き火台、ピザ窯を設けた体験スペース、湯上がりにも利用できるリラックスルームです。夕食には仕上げの演出を取り入れた洋食コース、朝食には地元食材と手作りを大切にしたビュッフェを用意します。
体験プログラムには、焚き火とマシュマロ、早朝散歩、温泉リトリート、モーニングヨガ、提灯を手に岳温泉を巡る夜語り、ロビーライブなどが含まれます。対象となる飲食や体験は、宿泊プラン、実施日、季節、天候によって異なります。
出典:PR TIMES 「飲み放題」で終わらない。「体験し放題」を目指す温泉ホテルへ。福島・岳温泉「mt. inn」が7月20日リニューアルオープン
山・湯・火を一つの滞在にする体験設計
今回の特徴は、個々の設備やサービスを並べるだけでなく、「山で動く、湯で休む、火を囲む、人と話す」という時間の連なりを宿泊商品として組み立てている点です。チェックインから夕食、夜、翌朝までの過ごし方に緩やかな流れが生まれ、滞在そのものを旅の目的にしやすくなります。
二本松市によると、岳温泉は安達太良山麓の標高約600メートルに位置し、豊富な湯量と大自然に包まれた山の湯として紹介されています。環境省も、標高1,700メートルの安達太良山を日本百名山に数えられる火山として紹介し、岳温泉を磐梯朝日国立公園の見どころに挙げています。山岳景観と温泉街が近接する土地の条件を、早朝散歩や登山、湯浴み、焚き火へ結び付けることで、施設内の設備だけでは生み出しにくい地域固有の滞在価値が伝わります。
40室だからこそ届く、人を介した案内
mt. innでは、スタッフが宿泊者の関心や天候を踏まえて過ごし方を提案する役割を担います。フリードリンクや設備をセルフサービスとして提供するだけでなく、焚き火へ誘う、翌朝の散歩を案内する、地域で楽しめる体験を紹介するといった小さな接点を重ねる考え方です。
観光庁(国土交通省)の「令和8年版観光白書(概要版)」では、宿泊業の人材確保と生産性向上が主要な論点とされ、温泉地が共同研修や若手リーダー育成を進める事例も示されています。紹介事例では若手育成研修の卒業生が6期累計63人に達しており、地域の魅力を人の言葉で届け続けるには、体験メニューの造成と同時に案内役を育てる仕組みが欠かせないことが読み取れます。mt. innがスタッフを体験の案内役として位置付ける取り組みは、接客を付帯業務ではなく宿泊価値の中心に置く丁寧な設計がうかがえます。

館内から岳温泉へ、地域に開くオールインクルーシブ
一般にオールインクルーシブは館内で消費を完結させる印象もありますが、mt. innはロビーを地域への入口と捉えています。今後は、安達太良を五感で巡る宝探し、ピザ窯体験、ファットバイク、初心者向け登山、シャワーウォーク、スノーハイクなどを、地域の事業者や自然資源と結びながら順次拡充する予定です。
観光庁(国土交通省)の「観光地域づくり事例集 第6章『災害からの観光復興強化』」には、東北の自然や温泉地の特色を旅行商品へ展開する取り組みが収録されています。地域資源を単独の見どころとして紹介するだけでなく、宿を起点とする行程に組み込むことは、温泉街での回遊や地域事業者との連携を促すうえで実務的な意味を持ちます。館内で旅のきっかけをつくり、地域へ送り出すmt. innの方針は、宿泊者と地域との接点を穏やかに増やす取り組みとして魅力的に映ります。
「STAY SLOW」を運営に落とし込む工夫
「STAY SLOW」は、活動を減らすだけの言葉ではなく、遊んだ後や働いた後に心身を緩め、次の一歩へ向かう時間を提案するコンセプトです。ロビーを通過空間から居場所へ変え、湯上がりに休める部屋や火を囲む広場を設けたことで、何もしない時間にも明確な居場所が用意されました。
宿泊現場では、体験を増やすほど案内や準備が複雑になりやすいため、天候や季節に応じて内容が変わることを予約時から明示し、当日のおすすめをスタッフ間で共有する運用が大切になります。40室の規模に合わせて体験の実施日や定員を整え、食事、温泉、屋外活動の時間を一つの行程として案内することで、無理に予定を詰め込まないコンセプトと現場運営をそろえやすくなります。
まとめ
mt. innのリニューアルは、飲食の包括性にとどまらず、岳温泉の湯、安達太良山の自然、焚き火、人による案内を一つの滞在へ編み直すものです。スタッフが宿泊者と地域をつなぐ役割を担い、館内で生まれた関心を温泉街や山へ広げる構想には、40室の宿ならではの温かな距離感が表れています。
既存施設の共用空間を生かしながら、土地に根差した過ごし方と接客の役割を再設計した点は、地域資源を宿泊価値へつなげたいホテルや旅館にとっても参考になる取り組みです。今後、季節ごとの体験や地域事業者との連携が育つことで、岳温泉を訪れる理由がさらに豊かになることが期待されます。
企業情報
- 施設名:岳温泉 mt. inn(マウントイン)
- 施設所在地:〒964-0074 福島県二本松市岳温泉1-7
- 客室数:40室(和室20室・洋室20室)
- 温泉:岳温泉・源泉かけ流しの酸性泉(男女各2つの浴槽)
- アクセス:JR二本松駅から路線バスで約25分、岳温泉バス停から徒歩約2分/東北自動車道二本松ICから車で約20分
- 施設電話番号:0243-24-5234
- 施設公式サイト:mt. inn公式サイト
- 運営会社名:株式会社mt. inn
- 代表取締役:鈴木安太郎
- 運営会社所在地:福島県二本松市岳温泉1-7
- 事業内容:温泉ホテルの運営、地域体験・宿泊商品の企画
- 運営会社電話番号:0243-24-5234
- 運営会社公式サイト:株式会社mt. inn公式サイト
参考資料
- 二本松市『岳温泉は安達太良山麓にあり、豊富な湯量と大自然に包まれた山の湯として紹介されている。(最新公表ページ)』: 岳温泉は安達太良山麓にあり、豊富な湯量と大自然に包まれた山の湯として紹介されている。
- 環境省『見どころ・施設(最新公表ページ)』: 見どころ・施設
- 観光庁(国土交通省)『令和8年版観光白書(概要版)(2026年7月)』: 令和8年版観光白書(概要版)
- 観光庁(国土交通省)『観光地域づくり事例集 第6章「災害からの観光復興強化」(公表資料)』: 観光地域づくり事例集 第6章「災害からの観光復興強化」

