夏になると、店先に現れる赤い「氷」の文字と青い波を描いた旗。見慣れたこの旗には、「氷旗(こおりばた)」という名前があります。
氷旗を見ただけで、氷を削る音や色鮮やかなシロップ、夏祭りの暑さまで思い出す人もいるでしょう。しかし、かき氷が誰でも楽しめる夏の食べ物になったのは、長い歴史のなかでは比較的最近です。冷蔵庫がない時代、夏の氷は一部の人しか口にできない貴重品でした。
冬の氷を夏まで残す氷室、米国から運ばれたボストン氷、国産の函館氷、機械製氷、そして氷を薄く削る機械。かき氷の歴史をたどると、氷を保存し、運び、作り、削る技術の発達が見えてきます。
この記事では、日本でかき氷がいつから食べられてきたのか、天然氷と普通の氷は何が違うのか、なぜ頭がキーンとなるのか、日本式かき氷に対する海外の反応まで解説します。
かき氷とは?氷を削って味わう日本の夏の食べ物
かき氷とは、氷を細かく削り、シロップやあん、果物などを添えて食べる氷菓です。
厚生労働省が過去に示した衛生上の定義でも、氷を削ったもの、または削った氷へ調味料、着色料、あん類、清涼飲料水などを加え、氷を主体としたものが「かき氷」とされています。
同じ冷たい甘味でも、アイスクリームは乳製品などを混ぜた液体を凍らせて作ります。かき氷は、すでに凍った氷を削り、その結晶や薄片の間へシロップや具材を含ませる食べ物です。
「かき氷」「削り氷」「氷水」と呼ばれてきた
現在は「かき氷」という呼び方が一般的ですが、地域や時代によって、削り氷、氷水、ぶっかき氷などの呼び名も使われてきました。
「かき氷」の「かき」は、氷を欠く、削るといった作り方を表します。大きな氷をそのまま口にするのではなく、刃物や機械で細かくして食べやすくする料理です。
現代でも、祭りの屋台で見かけるシンプルなかき氷と、果物やクリームを重ねた専門店のかき氷では、見た目も価格も大きく異なります。それでも、削った氷を中心に味と食感を組み立てる点は共通しています。
現代のかき氷はシロップをかけるだけではない
イチゴ、メロン、レモン、ブルーハワイなどのシロップをかけるかき氷は、今も祭りや海水浴場の定番です。
一方、甘味処では抹茶とあんを合わせた宇治金時が親しまれ、現代の専門店では生の果物、果実ソース、練乳、白玉、きなこ、ほうじ茶、クリームなども使われています。氷の内側へ具材やソースを重ね、最後まで味が変化するように作る店もあります。
かき氷は、喉の渇きや暑さをやわらげる簡単な氷菓であると同時に、氷の削り方と素材の組み合わせを楽しむデザートにもなっています。
かき氷の起源と歴史|日本ではいつから食べられていた?
雪や氷へ甘味や果汁を加える食文化は、日本以外の地域にも古くからあります。そのため、世界で最初のかき氷が日本で発明されたと断定することはできません。
ただし、日本には冬の氷を夏まで保存し、削った氷へ甘味を添えて味わった古い記録があります。現在の日本式かき氷につながる歴史として、氷室と平安時代の文学は重要です。
『日本書紀』に記された氷室と夏の氷
『日本書紀』には、氷室を発見し、その氷を天皇へ献上したという説話が記されています。
氷室とは、冬に採取した雪や天然の氷を入れ、夏まで保存するための施設です。地面を掘った穴や日当たりの少ない場所を利用し、草や枝などで覆って外気の影響を抑えました。
当然、保存した氷がすべて夏まで残るわけではありません。溶けることを見込んで多くの氷を蓄え、残った一部を利用します。氷室を作り、氷を採取し、管理して運ぶには、多くの人手と場所が必要でした。
『日本書紀』の記録は、現在のかき氷そのものを示すものではありません。しかし、機械のない時代にも、日本で夏の氷が特別な価値を持っていたことが分かります。
『枕草子』に登場する平安時代の削り氷
平安時代の『枕草子』には、削った氷を金属製の器へ入れ、甘葛をかけたものが「あてなるもの」、つまり上品なものとして登場します。
甘葛は、植物から得た甘い汁を煮詰めたものと考えられています。現在のイチゴシロップとは異なりますが、「氷を削り、甘味をかけて食べる」という構造は、現代のかき氷に近いものです。
ただし、清少納言がかき氷を発明したわけではありません。また、『枕草子』の記述をそのまま現代のかき氷の商品史の始まりとすることもできません。
ここから読み取れるのは、平安時代の宮廷では削り氷が知られ、珍しく上品な食べ物として評価されていたことです。
江戸時代にも氷はまだ貴重だった
江戸時代には、加賀藩などが冬に保存した氷を将軍家へ献上していました。旧暦6月1日に氷を口にし、暑い季節の無病息災を願う「氷の朔日」に関わる習慣もありました。
都市では冷たい水や氷を売る商いも現れます。ただし、現代のコンビニのように、安価な氷が全国でいつでも買えたわけではありません。
自然の寒さで作った氷は、採取できる地域と季節が限られます。保存中にも溶け、遠くへ運ぶほど失われる量が増えます。江戸時代に庶民が氷へ接する機会は生まれていましたが、氷が日常的な食品になったとは言いにくい状況でした。
明治時代に氷が商品として流通し始めた
開港後、日本には海外から氷が輸入されるようになります。同時に、国内でも天然氷を事業として採取し、都市へ運ぶ試みが続けられました。
さらに、自然の寒さに頼らず氷を作る機械製氷が導入されます。氷は権力者へ献上する季節の貴重品から、都市で販売される商品へ変わっていきました。
日本の氷利用と近代氷業の流れは、日本アイスクリーム協会の「アイスクリームの日本昔話」でも、文学、天然氷産業、機械製氷を通して詳しく整理されています。
ボストン氷と函館氷|天然氷産業がかき氷を身近にした歴史
明治初期の氷をめぐる歴史で重要なのが、米国から輸入された「ボストン氷」と、中川嘉兵衛が事業化した「函館氷」です。
どちらも機械で作った氷ではなく、冬の寒さで凍った天然氷でした。
米国から輸入されたボストン氷
ボストン氷は、米国東部で採取された天然氷を船で運び、日本で販売したものです。
航海中に氷を完全に溶かさないためには、断熱して保管しなければなりません。それでも到着までに相当量が失われ、輸送費もかかります。日本で販売される頃には高価な商品になりました。
この輸入氷の存在は、日本でも夏の氷に需要があり、保存と輸送が事業になり得ることを示しました。
中川嘉兵衛はなぜ国産天然氷の事業化に挑んだのか
中川嘉兵衛は、氷が食品の保存や医療などに役立つことを知り、国内で天然氷を採取して販売する事業へ挑戦しました。
しかし、清潔で厚い氷を大量に採り、夏まで保存し、消費地へ運べる場所は簡単には見つかりません。複数の地域で失敗を重ねた末、北海道・函館の五稜郭周辺で天然氷の事業化に成功します。
中川嘉兵衛の役割は、かき氷を発明したことではありません。自然条件に左右される氷を採取・保存・輸送し、継続的に販売できる商品へ変えたことにあります。
五稜郭の外濠から切り出された函館氷
冬に五稜郭の外濠で凍った氷を切り出し、氷室へ保存して、船で横浜や東京方面へ運びました。この国産天然氷は「函館氷」として知られるようになります。
函館氷は、海外から長距離輸送するボストン氷と比べて価格面でも競争力を持ちました。国内で品質のよい氷を安定して供給する産業が育つきっかけになります。
ただし、天然氷の事業が成長しても、天候と季節の制約は残ります。氷をもっと安定して供給するには、自然に凍るのを待たずに作る技術が必要でした。
輸入氷と国産天然氷の競争で市場が育った
ボストン氷と函館氷の関係は、単純な「外国製品に日本が勝った」という物語ではありません。
輸入氷によって市場が生まれ、国産天然氷が価格や品質を競い、さらに機械製氷が安定供給を可能にしました。複数の方法が競い合うことで、氷は一部の人だけの貴重品から、より多くの人が利用できる商品へ近づいていきます。
かき氷の大衆化は、シロップの発明だけでは説明できません。まず、その中心となる氷を夏の都市へ届けられるようになったことが重要でした。
かき氷機の歴史|氷を削る技術はどう進化した?
氷が手に入りやすくなっても、大きな氷の塊を食べることはできません。かき氷にするには、薄く、均一に、素早く削る道具が必要です。
ここでは、氷を作る「製氷」と、できた氷を削る「削氷」を分けて考えます。
氷かきのカンナから回転式のかき氷機へ
古い氷かきの道具には、氷の表面へ刃を当て、木材を削るカンナのように往復させるものがありました。
やがて、大きな氷を固定して回転させ、一定の位置にある刃へ当てて削る機械が使われるようになります。ハンドルを回す力を氷の回転へ変えられるため、手で刃を往復させるより連続して削りやすくなりました。
店先で大きなハンドルを回し、削った氷を器へ受ける手回し式の姿は、昭和のかき氷を象徴するものになっています。
機械製氷で氷を安定して作れるようになった
天然氷は冬にしか作れず、暖冬、降雪、雨、保存状態などにも影響されます。機械製氷は、こうした自然条件に頼らず、必要な場所で氷を作れるようにしました。
氷の供給量が増え、飲食店や販売店が入手しやすくなると、かき氷も一部の地域や上流階級だけの食べ物ではなくなります。
昭和に入ると、かき氷機が店へ普及し、さらに家庭用の機械も登場しました。祭りや甘味処だけでなく、家庭で子どもと氷を削ることも夏の体験になります。
手回し式から電動式へ
電動式の削氷機は、モーターの力で氷を回転させ、一定の速さで刃へ送ります。多くの注文へ対応しやすく、削る作業の負担も減らせます。
ただし、電動なら自動的にふわふわになるわけではありません。氷の温度、刃の角度や切れ味、氷を刃へ当てる強さなどによって、削られた氷の厚さは変わります。
機械は安定した回転を作りますが、どのような食感に仕上げるかには、使う人の調整も残っています。
現代の専門店は削る薄さと食感を追求している
現代のかき氷専門店では、氷を薄く削って空気を含ませるように盛り、口に入れたときの軽さや溶け方を重視する店があります。
氷を山のように高く盛り、果物のソースやクリームを重ねるかき氷は、祭りのシンプルな一杯とは価格も食べ方も違います。氷はシロップを受け止める土台であると同時に、食感を決める主要な素材になりました。
専門店のかき氷が高価になる理由も、天然氷だからという一つの要素だけでは説明できません。果物などの材料、仕込み、削氷の調整、盛り付け、限定性など、複数の要素が価格に反映されています。
天然氷とは?普通の氷・純氷との違い
天然氷は、冬の自然の寒さを利用し、屋外の池などで凍らせた氷です。
一方、純氷は製氷工場で時間をかけて凍らせ、不純物や気泡を外へ逃がしながら作る透明度の高い氷を指します。家庭の冷凍庫では、比較的短時間で四方から凍るため、気泡や水に含まれる成分が中心へ集まり、白く見えることがあります。
天然氷は冬の寒さを利用して作られる
天然氷の蔵元は、池を清掃し、水を張り、冬の冷気で少しずつ凍らせます。雪、落ち葉、雨などが表面へ入れば、取り除かなければなりません。
十分な厚さになった氷を切り出し、氷室へ運び、おがくずなどで覆って保存します。冬に作った氷を夏まで残すという基本的な考え方は、古代の氷室文化とも共通しています。
ただし、現代の天然氷は衛生管理と商品としての品質を前提に作られています。古代の氷室をそのまま再現したものではありません。
天然氷・純氷・家庭の氷は作り方が違う
天然氷と純氷は、透明で大きな氷になりやすい点が似ていますが、凍らせる方法が異なります。
- 天然氷:自然の寒さで屋外の池などを凍らせる
- 純氷:製氷工場で水を動かすなどしながら時間をかけて凍らせる
- 家庭の氷:冷凍庫の製氷皿や自動製氷機で比較的速く凍らせる
天然氷だから必ず柔らかく、機械で作った氷だから必ず硬い、という単純な区別はできません。水質、凍らせ方、保存温度、削るときの温度などによって状態は変わります。
ふわふわ食感を生むのは氷の温度・刃・削り方
冷凍庫から出した直後の非常に冷たい氷は硬く、刃を当てると細かな粉や厚い破片になりやすいことがあります。
削る前に氷の温度を調整し、表面がわずかに緩んだ状態で、よく切れる刃を浅く当てると、氷を薄い帯のように削りやすくなります。薄片が重なることで、口どけの軽い食感が生まれます。
つまり、「天然氷を使えば自動的にふわふわになる」のではありません。氷の状態を見ながら削る技術と、機械の調整が必要です。
かき氷を食べると頭がキーンとなるのはなぜ?
かき氷やアイスクリームを急いで食べたとき、額やこめかみが突然痛むことがあります。一般に「頭がキーンとなる」と表現されるこの痛みは、医学的にはアイスクリーム頭痛、寒冷刺激による頭痛などと呼ばれます。
冷たさを脳が痛みとして感じる仕組み
非常に冷たいものが口の奥や上あごへ急に触れると、周辺の血管や神経が刺激されます。その刺激に対し、脳が口の中ではなく額などの痛みとして感じる関連痛が起こると考えられています。
通常は短時間で治まりますが、感じ方には個人差があります。
天然氷なら頭がキーンとしないのか
天然氷のかき氷は頭が痛くなりにくい、と紹介されることがあります。しかし、天然氷そのものに頭痛を防ぐ特別な成分があるわけではありません。
専門店では、氷を冷凍庫から出したまま削らず、削りやすい温度へ調整することがあります。さらに薄く削られた氷は口の中で溶けやすいため、急激な冷刺激が起こりにくい可能性があります。
それでも、天然氷を使ったかき氷を急いで大量に食べれば、頭がキーンとなることはあります。氷の出自だけでなく、提供時の温度、削り方、食べる量と速さが関係します。
ゆっくり食べると起こりにくい
頭痛を避ける基本は、一度に多く口へ入れず、ゆっくり食べることです。
冷たい氷が口の奥へ急に触れないように少量ずつ食べれば、刺激を抑えられます。痛みが起きた場合は食べるのを止め、口の中の温度が戻るのを待ちます。
かき氷のシロップは全部同じ味?ブルーハワイは何味?
「イチゴ、メロン、レモンのシロップは、色と香りが違うだけで中身はすべて同じ」という話を聞いたことがあるかもしれません。
確かに、昔ながらの市販シロップには、糖液を共通の基礎にして、着色料と香料によって印象を変えている商品があります。人の味覚は舌だけでなく、鼻から感じる香りや目から入る色にも影響されるため、赤い色とイチゴの香りから「イチゴ味」を感じます。
すべてのかき氷シロップが同じ味ではない
ただし、「かき氷シロップは全部同じ味」という説明は正確ではありません。
メーカーや商品によって、香料、酸味料、甘味料、果汁などの有無や配合が異なります。果物を煮たり搾ったりして店内で作るソースも、一般的なシロップとは別物です。
「似た糖液を使う商品があること」と、「市場にあるすべてのシロップが同一であること」は分けて考える必要があります。
ブルーハワイに統一された味はない
ブルーハワイは、青い色と南国を思わせる名前が特徴です。しかし、「ブルーハワイ味」という一つの果物があるわけではありません。
ラムネやソーダのような爽やかな味、パインなどの果物を思わせる味、柑橘系の香りを加えたものなど、メーカーや店によって表現が異なります。
何味かを一つに決められないこと自体が、ブルーハワイの特徴です。味の名前というより、青い色と香りを組み合わせて夏や南国のイメージを作るカテゴリーに近いでしょう。
日本のかき氷と台湾・海外のシェイブアイスの違い
氷を削って甘味を加える食文化は、日本だけのものではありません。台湾の刨冰、韓国のピンス、ハワイのシェイブアイス、東南アジアのアイスカチャンなど、暑い地域を中心に多様な氷菓があります。
違いを見るときは、どの国が優れているかではなく、氷へ味を付ける方法、削り方、具材、食べ方に注目すると分かりやすくなります。
台湾かき氷は果物や味付きの氷も楽しむ
台湾のかき氷には、氷の上へマンゴーなどの果物、練乳、豆類、芋団子などを盛るものがあります。
水から作った氷を削る形式だけでなく、牛乳などで味を付けた氷を薄く削り、層のような食感を作るものも知られています。
日本でも果物や練乳を使いますが、台湾式では具材をたっぷり盛った一皿のデザートとしての印象が強いものがあります。
韓国のピンスは氷と具材を合わせて食べる
韓国のピンスでは、小豆を使うパッピンスのほか、果物、きなこ、餅、アイスクリームなど、多様な具材が使われます。
乳成分を含む細かな氷を使う商品もあり、氷だけの透明感より、具材と混ぜながら食べることを楽しむ形式があります。
ただし、日本、台湾、韓国のどこにも、昔ながらの簡素なものと現代的な専門店の商品があります。国名だけで食感を一つに決めることはできません。
ハワイのシェイブアイスと日本のかき氷
ハワイのシェイブアイスは、細かく削った氷へ色鮮やかなシロップをかけ、アイスクリームや小豆などを組み合わせることがあります。
ハワイには日本からの移民が持ち込んだ食文化の影響もあり、日本のかき氷と無関係ではありません。一方、現地の果物や味の好みを取り込み、ハワイ独自の食べ物として発展しています。
日本のかき氷は削り方と口どけを重視する
現代の日本式かき氷、とくに専門店では、氷をどれだけ薄く削れるか、口へ入れたときにどう溶けるかが評価されます。
もちろん、台湾や韓国、ハワイにも細かな氷を作る店はあります。「海外は粗く、日本だけがふわふわ」とは言えません。
日本の特徴は、天然氷や純氷の種類、氷を削る前の温度、刃の調整、盛り方までを説明し、食感そのものを商品の価値として伝える店が多いことです。
かき氷の海外の反応|日本式の食感と価格をどう見ている?
海外のSNSでは、日本のかき氷に対して「美しい」「ふわふわしている」という反応だけでなく、自国で同じ食感を再現できない、価格に驚いたという声も見られます。
日本で食べたふわふわ食感を再現したい
Redditには、日本で食べたかき氷を気に入り、本格的な日本製のかき氷機を購入したものの、同じような柔らかい食感にならないという相談があります。日本式かき氷の食感を再現したいという投稿
投稿者の氷は硬く、粗く削れ、すぐに溶けてしまう一方、日本で食べたものは軽く、空気を含み、ゆっくり溶けたと感じています。
この違いは、機械の生産国だけでは解決しません。氷の大きさ、温度、刃の位置、氷を休ませる時間など、複数の条件を調整する必要があります。
高級かき氷の価格に驚く外国人
シロップをかけた氷というイメージがある人にとって、専門店のかき氷は高価に見えます。実際に、氷へ1,000円以上を払うことへ疑問を持つ反応もあります。
一方、食べてみると評価が変わったという声もあります。氷が細かいだけでなく、生の果物やソース、クリーム、氷の内側に隠れた白玉やあんなど、食べ進めるごとに味が変わるためです。
「氷に高い料金を払う」のではなく、一皿のデザートとして理解すると、価格への見方も変わります。
抹茶・あんこ・白玉など和素材への反応
海外でも抹茶はよく知られるようになりましたが、かき氷では、抹茶の苦味を練乳やあんの甘さと合わせ、白玉の食感を加えます。
初めて食べる人にとっては、冷たい氷に豆のあんを載せることや、もちもちした白玉を合わせることが意外に映るかもしれません。
その一方で、抹茶アイスだけでは分からなかった苦味、甘味、氷の軽さの組み合わせを楽しめます。日本のかき氷は、海外でも知られている抹茶を、別の食べ方で体験できる入口になっています。
海外の反応は「芸術的」だけでは語れない
高く盛られた氷と鮮やかな果物は、写真でも目を引きます。しかし、海外の人が関心を持っているのは見た目だけではありません。
- どうすれば薄く削れるのか
- なぜ口どけが違うのか
- なぜ価格差が大きいのか
- 天然氷とは何か
- 抹茶やあんと氷が合うのか
こうした疑問には、日本のかき氷が、簡単な夏のおやつと職人性を持つデザートの両方へ発展したことが表れています。
かき氷はなぜ日本の夏の風物詩になった?
現在は一年中かき氷を出す専門店もあります。それでも、多くの日本人にとって、かき氷は夏を思い出させる食べ物です。
その理由は、冷たいからだけではありません。氷旗、ガラスの器、氷を削る音、シロップの色、祭りや海の家など、かき氷を取り巻く景色が季節の記憶になっているからです。
冷蔵庫がない時代、夏の氷は特別だった
日本では古代から、冬の氷を夏まで残すために氷室を作ってきました。夏の氷は、自然にそこにあるものではなく、長い時間と人の手をかけて届けるものでした。
機械製氷と冷蔵設備が普及すると、氷そのものは珍しくなくなります。それでも、「暑い季節に氷を食べる」という特別感は、かき氷のなかに残りました。
見た目・器・音・口どけから涼しさを感じる
かき氷は、実際に口や体を冷やすだけでなく、見た目からも涼しさを伝えます。
透明な器、白い氷、青い波を描いた氷旗。削氷機から氷が落ちる音や、口の中ですぐに消える食感も、暑さを一時的に忘れさせます。
風が吹いていることを音で知らせる風鈴が夏の風物詩になった歴史と同じように、かき氷も複数の感覚を通して涼を伝える存在です。
また、日本では暑さを完全に消すだけでなく、打ち水で一時的な涼しさを作る文化も受け継がれてきました。
夏祭りや海の家が季節の記憶を作った
かき氷を食べる場所も、夏の印象を強めています。
祭りの屋台、花火大会、海水浴場、商店街、甘味処。家族や友人と出かけ、暑いなかで氷を食べた体験が、味と季節を結びつけます。
花火大会が夏に定着した歴史を知ると、かき氷が夏の行事とともに記憶されてきた背景も見えてきます。
祭りでは、かき氷と並んでビー玉入りのラムネも親しまれてきました。どちらも味だけでなく、器、色、音まで含めて夏を感じさせます。
貴族のぜいたく品から身近な夏の味へ変わった
平安時代の削り氷と現代の祭りのかき氷は、同じものではありません。
甘味も、器も、作る道具も異なります。それでも、夏に氷を細かくし、甘味を添えて味わうという発想は長く受け継がれました。
氷室、天然氷の採取、長距離輸送、機械製氷、削氷機、家庭の冷凍庫。技術が変わるたび、かき氷を食べられる人と場所が増えました。
家庭の夏を象徴する食べ物という点では、麦茶が日本の夏に定着した歴史とも共通しています。どちらも特別な日にだけ楽しむものではなく、家庭で繰り返し味わうことで夏の記憶になってきました。
かき氷は、貴重だった氷が安価になったから残っただけではありません。技術によって身近になった後も、食感、味、場所、思い出を変えながら、夏を味わう文化として受け継がれてきたのです。
まとめ|かき氷は氷を夏まで届ける技術が育てた日本文化
日本では古くから、氷室を使って冬の氷を夏まで保存していました。平安時代の『枕草子』には、削った氷へ甘葛をかけて味わう様子が記されています。
しかし、夏の氷は長い間、一部の人しか口にできない貴重品でした。
明治時代になると、米国からボストン氷が輸入され、中川嘉兵衛が函館氷の事業化に成功します。さらに機械製氷と削氷機が普及したことで、かき氷は都市の店や家庭でも楽しめる夏の食べ物になりました。
現代の専門店では、氷の温度、刃、削る薄さを調整し、軽い口どけを作ります。果物、クリーム、抹茶、あん、白玉なども加わり、かき氷は一皿のデザートへ発展しました。
海外からは、ふわふわした食感を再現したいという関心がある一方、価格への驚きもあります。実際に食べて初めて、氷だけでなく削氷技術や素材の組み合わせに価値があると気づく人もいます。
そして、夏の店先で揺れる氷旗は、氷が貴重品だった歴史を意識しなくても、私たちに夏の到来を知らせます。
かき氷は、冷たいものを食べるだけの文化ではありません。氷を夏まで保存し、遠くへ運び、安定して作り、より軽く削ろうとしてきた技術と工夫を、一杯のなかで味わう日本の夏文化です。
よくある質問(FAQ)
かき氷はどこの国が発祥ですか?
雪や氷へ甘味や果汁を加える文化は、世界各地に古くからあるため、かき氷そのものを日本発祥と断定することはできません。日本では『枕草子』に削った氷へ甘葛をかけた食べ物が登場し、その後、独自のかき氷文化が発展しました。
日本ではいつからかき氷を食べていますか?
平安時代の『枕草子』に、削った氷へ甘葛をかけた食べ物が記されています。ただし、現代と同じシロップや削氷機を使ったかき氷ではなく、貴族が味わう貴重な氷菓でした。
かき氷店の「氷」の旗は何という名前ですか?
「氷旗(こおりばた)」と呼ばれます。白地に赤い「氷」の文字、青い波などを描いたデザインがよく知られ、現在はかき氷を販売している店の目印になっています。
天然氷と普通の氷は何が違いますか?
天然氷は、冬の自然の寒さを利用して屋外の池などで凍らせます。純氷は製氷工場で時間をかけて作り、家庭の氷は冷凍庫で比較的速く凍らせます。作り方は異なりますが、かき氷の食感は氷の種類だけでなく、温度、刃、削り方にも左右されます。
天然氷は頭がキーンとなりにくいですか?
天然氷だから頭痛が起こらないわけではありません。専門店では削る前に氷の温度を調整し、薄く削るため、急激な冷刺激が起こりにくい場合があります。天然氷でも、急いで大量に食べれば頭がキーンとなることがあります。
かき氷のシロップは本当に全部同じ味ですか?
糖液を共通の基礎にして、色と香りで印象を変えている商品はあります。しかし、香料、果汁、酸味料などの配合は商品ごとに異なるため、すべてのシロップが同じ味というわけではありません。
ブルーハワイは何味ですか?
統一された一つの味はありません。ラムネやソーダ風、パインや柑橘を思わせるものなど、メーカーや店によって味と香りが異なります。
7月25日が「かき氷の日」なのはなぜですか?
「な(7)つ(2)ご(5)おり」という語呂合わせと、1933年7月25日に山形市で当時の国内最高気温が記録されたことにちなみ、かき氷に関わる業界団体が記念日としました。
