夏になると、冷蔵庫の中に麦茶のポットが現れる。
学校や仕事へ持っていく水筒にも麦茶を入れ、食事のときも、風呂上がりにも、冷えた一杯を飲む。日本ではごく普通の光景ですが、考えてみると不思議です。水分補給だけなら水でもよいはずなのに、なぜ多くの家庭が麦茶を作るのでしょうか。
麦茶は、焙煎した大麦から作るノンカフェインの飲み物です。古くは「麦湯」と呼ばれ、江戸時代には夏の夜に人々が涼みながら楽しみました。昭和に冷蔵庫が普及すると、「冷たい麦茶」が家庭の夏の定番になります。
この記事では、麦茶の原料やカフェインの有無、起源と歴史、なぜ夏に飲まれるのか、水出しと煮出しの違い、研究されている健康機能、海外の反応まで解説します。身近な一杯から、日本人が暑い季節をどのように過ごしてきたのかを見ていきましょう。
麦茶とは?原料・味・カフェインの有無
麦茶は、大麦を焙煎し、湯や水で成分を抽出した飲み物です。
名前に「茶」と付きますが、緑茶や紅茶のような茶葉は使いません。焙煎による香ばしい香り、ほのかな甘み、すっきりした後味が特徴です。砂糖を加えずに飲むのが日本では一般的で、冷やしても温かくしても楽しめます。
麦茶は何からできている?主な原料は六条大麦
日本の麦茶には、一般に六条大麦が多く使われます。
大麦は穂に実が付く並び方から、主に六条大麦と二条大麦に分けられます。二条大麦は粒が大きく、ビールや麦芽の原料としてよく利用されます。一方、六条大麦は麦茶や麦ごはんなどに広く使われてきました。
ただし、すべての麦茶が六条大麦というわけではありません。二条大麦、はだか麦、もち麦、紫色の色素を持つ品種などを使った商品もあります。商品ごとの香りや甘みの違いは、品種だけでなく、焙煎方法や抽出方法によっても生まれます。
麦茶はお茶なのに茶葉を使わない
緑茶、紅茶、ウーロン茶は、いずれもチャノキの葉から作られます。発酵や加熱の方法は違っても、原料は同じです。
麦茶の原料はチャノキではなく、大麦です。そば茶や黒豆茶と同じように、植物の実や種を煎って抽出する飲み物も、日本語では広く「お茶」と呼ばれます。
この原料の違いが、カフェインの有無にも関係します。
麦茶にカフェインは含まれる?ノンカフェインである理由
一般的な麦茶には、カフェインが含まれていません。
カフェインを後から除去しているのではなく、原料の大麦にもともとカフェインが含まれていないためです。そのため、カフェインを控えたい時間帯や、家族で共有する日常の飲み物として選ばれています。
「カフェインレス」と「ノンカフェイン」は厳密には意味が異なります。カフェインレスは、もともと含まれていたカフェインを減らしたもの。ノンカフェインは、原料の段階から含んでいないものを指すのが一般的です。麦茶は後者に当たります。
麦茶とほうじ茶・緑茶・ルイボスティーの違い
麦茶とほうじ茶は、どちらも香ばしい飲み物です。しかし、ほうじ茶は茶葉を焙煎して作るため、量の差はあってもカフェインを含みます。
緑茶も茶葉が原料で、渋みやうま味を持ち、カフェインを含みます。ルイボスティーは南アフリカ原産の植物から作られ、一般的にノンカフェインです。麦茶との違いは、原料、香り、味だけでなく、育ってきた地域文化にもあります。
麦茶の特徴は、日本で古くから利用されてきた大麦を焙煎し、食事にも合わせやすい無糖の飲み物として生活に定着したことです。
麦茶はなぜ夏に飲む?日本の夏の定番になった理由
麦茶は一年中飲めます。それでも、日本人が強く思い浮かべるのは夏です。
そこには、大麦の収穫時期、夏の麦湯店、冷蔵庫の普及、作り置きのしやすさが重なっています。古くから今と同じ冷たい麦茶を飲んでいたのではなく、時代ごとの暮らしに合わせて「夏の飲み物」になっていきました。
大麦の収穫期「麦秋」が初夏に重なる
麦が実り、収穫を迎える5月から6月ごろを「麦秋」と呼びます。
秋という字が使われるのは、季節としての秋ではなく、穀物が実る収穫期を表しているからです。周囲の田が青くなる初夏に、麦畑だけが黄金色になる風景は、日本の季節を表す言葉として俳句にも詠まれてきました。
収穫したばかりの麦を煎って飲む時期と暑くなり始める季節が重なったことは、麦の飲み物と夏の結び付きを考えるうえで重要です。
江戸時代には「麦湯」の店が夏の夜に並んだ
江戸時代には、麦茶は「麦湯」と呼ばれていました。
天保年間の風俗を記した『寛天見聞記』には、夏の夕方になると町に麦湯の行灯を掲げ、腰掛けを並べて商う店があったことが記されています。人々は夕涼みをしながら、炒った麦の香りを楽しんでいました。
現在のように家庭の冷蔵庫から注ぐ飲み物ではありませんでしたが、麦の香ばしい飲み物を夏に楽しむ文化は、すでに江戸の町に根付いていたのです。
暑さを食べ物や飲み物で乗り切ろうとする感覚は、暑気払いという日本の夏の知恵にも通じます。
冷蔵庫の普及で「冷たい麦茶」が家庭の定番になった
冷たい麦茶が家庭の風景になったのは、比較的新しい時代です。
昭和30年代以降、電気冷蔵庫が一般家庭へ広がると、やかんで煮出した麦茶をポットに移し、冷蔵庫で冷やしておけるようになりました。さらにティーバッグ、水出し商品、ペットボトル飲料が登場し、作る手間も小さくなります。
大量に作れて、食事にもおやつにも合わせやすく、家族が好きなときに飲める。冷蔵庫という生活道具と結び付いたことで、麦茶は「家庭にある夏の飲み物」になりました。
香ばしさ・冷たさ・琥珀色が涼しさを感じさせる
麦茶が夏らしいのは、温度だけが理由ではありません。
透明なコップに入った琥珀色、氷が触れ合う音、焙煎した麦の香り、すっきりした後味。目、耳、鼻、口を通して涼しさを感じられます。
日本では、実際の気温を下げるだけでなく、感覚によって暑さをやわらげる工夫が育ってきました。風鈴の音で涼を感じる日本文化も、その一例です。
また、冷たく軽い食べ物を夏に楽しむ文化は、日本人が夏にそうめんを食べる理由にも見られます。麦茶もそうめんも、喉を通る感覚や見た目まで含めて夏に合うものとして親しまれてきました。
麦茶はいつから飲まれている?起源と歴史
麦茶の歴史を語るときは、「大麦が日本へ伝わった時期」と「現在に近い飲み方が確認できる時期」を分ける必要があります。
大麦の伝来が古いからといって、その時代に今と同じ麦茶が存在したとは限りません。歴史をたどると、麦を食べる文化、炒った麦を湯に溶く飲み方、夏の麦湯、冷蔵庫で冷やす麦茶という変化が見えてきます。
麦茶の起源は縄文時代?大麦が日本へ伝わった時期
大麦は、縄文時代末期ごろまでに日本へ伝わったとされます。
土器に残った焦げた穀物へ水を加えたことが麦茶の始まりだった、という説も紹介されます。しかし、当時の人が現在の麦茶に相当する飲み物を日常的に作っていたと断定できるわけではありません。
「麦茶の起源は縄文時代」と言い切るより、大麦との長い付き合いの中から、炒る、挽く、湯に溶くという飲み方が生まれたと考えるのが適切です。
平安時代には炒った麦を飲む記録が残っている
平安時代の辞書『和名類聚抄』には、麦を炒って粉にし、湯水に溶いて用いるものが記されています。
これは、はったい粉や麦こがしに近く、現在のように粒やティーバッグから成分を抽出する麦茶とは異なります。それでも、炒った麦の香りを飲み物として楽しむ発想が、千年以上前に存在したことを示す記録です。
豊臣秀吉の北野大茶湯と「麦こがし」
1587年、豊臣秀吉は京都の北野天満宮で大規模な茶会を開きました。広く参加を呼びかける中で、茶を持たない人は「こがし」でもよいとした記録が知られています。
ここでいうこがしは、炒った麦などを粉にしたものです。抹茶だけでなく、庶民に身近な炒り麦も飲み物として認識されていたことがうかがえます。
ただし、これも現在の麦茶と同一ではありません。麦を炒り、香ばしさを引き出して飲む文化の一段階として位置付けるのが自然です。
江戸時代の麦湯店から家庭の飲み物へ
江戸時代の麦湯は、夏の夜に外で楽しむ飲み物でした。その後、焙煎した麦が商品として流通し、家庭でもやかんで煮出されるようになります。
外で一服するための飲み物が、日常的な家庭の飲み物へ変わった背景には、焙煎麦の販売、都市生活の変化、家庭用の調理器具、そして冷蔵庫の普及がありました。
ティーバッグ・水出し・ペットボトルが麦茶を一年中の飲み物にした
かつては、粒状の焙煎麦をやかんで煮出す方法が中心でした。
ティーバッグが普及すると、煮出した後の麦を片付けやすくなります。水に入れて待つだけの水出し商品、開栓すれば飲めるペットボトル商品も登場しました。
現在は季節を問わず買えますが、「夏になったら家で作る」という習慣も残っています。便利になって通年化する一方、季節の記憶は消えなかったのです。
6月1日が「麦茶の日」になった理由
6月1日は「麦茶の日」です。全国麦茶工業協同組合が1986年に制定しました。
初夏は麦の収穫期であり、6月1日は衣替えの時期でもあります。気候や服装が夏へ移る節目と、麦茶の季節を重ねた記念日です。
麦茶はなぜ香ばしい?焙煎で生まれる味と香り
麦茶らしさを決めるのは、大麦だけではありません。大きな役割を持つのが焙煎です。
同じ原料でも、どの温度で、どの程度まで煎るかによって、香り、色、苦み、甘みが変わります。
麦茶は大麦を焙煎して作られる
麦茶用の大麦は、洗浄や乾燥などの工程を経て焙煎されます。
加熱によって表面は褐色になり、生の大麦にはない香ばしい香りが生まれます。つまり麦茶は、単に大麦を煮た飲み物ではなく、焙煎によって味と香りを設計した飲み物です。
メイラード反応が麦茶独特の香りと色を生む
焙煎中には、糖とアミノ酸などが加熱によって反応する「メイラード反応」が起こります。
パンの焼き色、炒ったナッツ、コーヒーの香りにも関係する反応です。麦茶では、この過程でさまざまな香気成分が生まれ、琥珀色と香ばしさが作られます。
専門的な成分名を知らなくても、袋を開けたときの炒り麦の香りを思い浮かべれば、焙煎の役割が分かります。
深煎りと浅煎りでは香りや味が異なる
深く焙煎すると、色が濃くなり、香ばしさや苦みが強くなる傾向があります。浅めの焙煎では、穀物らしい甘みや軽い香りを感じやすくなります。
実際の商品では、異なる焙煎度の麦を組み合わせることもあります。コーヒーと同じように、「麦茶」という一つの名前の中にも香りと味の幅があるのです。
焙煎した香りを楽しむ日本の飲み物文化
日本には、茶葉を焙煎するほうじ茶、玄米を加える玄米茶など、香ばしさを楽しむ飲み物があります。
麦茶もその一つですが、すべてを同じ文化の起源から説明することはできません。共通しているのは、加熱によって生まれる香りを、味だけでなく落ち着きや懐かしさとともに楽しんできたことです。
麦茶の効果とは?健康面で分かっていること
麦茶には、さまざまな健康効果があると紹介されることがあります。
しかし、原料の大麦に含まれる栄養、試験管や動物を使った研究、特定の条件で行われた人の試験、一般的な麦茶を日常的に飲む効果は区別しなければなりません。
確実にいえる特徴と、研究段階の可能性を分けて見ていきます。
麦茶は無糖・ノンカフェインで日常の水分補給に使いやすい
砂糖を加えていない麦茶は、日常の水分補給に取り入れやすい飲み物です。カフェインを含まないため、時間帯を選びにくく、食事の味も邪魔しにくいという利点があります。
ただし、麦茶を飲むだけで熱中症を防げるわけではありません。大量に汗をかいたときは、水分だけでなく塩分なども失われます。気温、運動量、体調に応じた補給と休息が必要です。
麦茶にミネラルはどのくらい含まれる?
大麦にはカリウムなどのミネラルが含まれますが、抽出した麦茶に含まれる量は、商品や作り方によって異なります。
商品名に「ミネラル」と付く麦茶もあるため、麦茶全般に大量のミネラルが含まれると思われがちです。しかし、一般的な麦茶だけで汗によって失われた電解質を十分補えるとは限りません。栄養成分表示を確認し、「麦茶=経口補水液」と考えないことが大切です。
麦茶の抗酸化作用や胃への働きは研究段階
焙煎大麦の抽出物については、抗酸化作用、胃粘膜への作用、炎症や糖代謝に関係する働きなどが研究されています。
ただし、試験管内や動物実験で示された作用を、そのまま人が麦茶を飲んだときの病気予防へ置き換えることはできません。「麦茶を飲めば胃が治る」「糖尿病を防げる」といった断定は不適切です。
研究は、麦茶に含まれる成分の可能性を調べる段階にあると理解するのがよいでしょう。
焙煎麦茶と血流・冷えに関する研究
焙煎大麦抽出物を使った人の試験では、冷房環境下での皮膚血流量や皮膚温の低下が、プラセボと比べて小さかったという結果が報告されています。
米国国立医学図書館に掲載された研究は、15人を対象にした無作為化二重盲検クロスオーバー試験です。使用されたのは特定成分を含む焙煎大麦抽出物であり、あらゆる市販麦茶や飲み方で同じ結果になると証明したものではありません。
「麦茶が冷え性を治す」と広げるのではなく、焙煎によって生まれる成分と身体反応の関係が研究されている、と捉える必要があります。
大麦の食物繊維と麦茶の成分は同じではない
大麦そのものは、βグルカンをはじめとする食物繊維を含む食品です。
しかし、麦茶は大麦を丸ごと食べるのではなく、水や湯で抽出した飲み物です。大麦の栄養成分が、そのまま同じ量だけ麦茶へ移るわけではありません。
食物繊維を目的にするなら、もち麦や押し麦などを食品として食べる方法と、麦茶を飲むことは分けて考える必要があります。
麦茶は子どもや妊娠中でも飲める?
麦茶はノンカフェインで無糖の商品が多く、家族で共有しやすい飲み物です。
一方、「自然な飲み物だから誰でも無条件に飲める」と考えるのも正確ではありません。年齢、アレルギー、持病、商品の成分によって注意点は変わります。
ノンカフェインのため家族で共有しやすい
麦茶はカフェインを含まないため、子どもやカフェインを控えている人の飲み物として選ばれています。
妊娠中も、カフェインを避ける選択肢の一つになります。ただし、水分の必要量や食事制限は人によって異なります。治療中の病気がある場合や、医療者から指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
赤ちゃん用麦茶と一般的な麦茶の違い
赤ちゃん用麦茶は、一般向けの商品より薄めに作られていたり、飲みやすい容器に入っていたりします。
一般的な麦茶を与える場合も、濃さ、温度、衛生状態に注意が必要です。離乳や水分補給の進め方には個人差があるため、商品の対象月齢を確認し、必要に応じて小児科などへ相談するのが安心です。
大麦アレルギーや体調に注意が必要な場合もある
麦茶の原料は大麦です。大麦にアレルギーがある人は避ける必要があります。
また、商品によっては大麦以外の穀物や香料などを含むことがあります。ノンカフェインという特徴だけで判断せず、原材料表示を確認してください。
水出し麦茶と煮出し麦茶の違い
家庭用麦茶には、水出し、煮出し、お湯出しなどの作り方があります。
どれが正解というものではありません。手軽さ、香り、濃さ、冷ます時間によって選べます。まずは商品の表示に従うことが基本です。
水出し麦茶の特徴|手軽で作り置きしやすい
水出しは、麦茶パックを水に入れ、冷蔵庫で抽出する方法です。
湯を沸かしたり冷ましたりする手間がなく、暑い季節でも作りやすいことが利点です。味は比較的すっきり仕上がりやすい一方、抽出時間が短いと薄く感じる場合があります。
煮出し麦茶の特徴|香りと濃さを出しやすい
煮出しは、沸騰した湯へ麦茶を入れ、商品指定の時間だけ加熱または蒸らして作ります。
高い温度で抽出するため、香りや色、コクを出しやすい方法です。ただし、長時間煮続けたり、パックを入れたままにしたりすると、苦みや雑味を感じることがあります。
作った後は、長時間室温に置かず、衛生的な方法で冷まして冷蔵します。
お湯出し・水出し・煮出しはどう選ぶ?
手軽さを優先するなら水出し、香りと濃さを楽しみたいなら煮出しが選びやすいでしょう。お湯出しは、沸かした湯へパックを入れて蒸らす方法で、煮続ける必要がありません。
ただし、パックには水出し専用、煮出し兼用などの違いがあります。指定外の方法では味が出にくかったり、雑味が強くなったりするため、パッケージの作り方を確認してください。
作った麦茶は何日持つ?保存時の注意点
家庭で作った麦茶は保存料を含まず、作り方や容器の状態にも左右されるため、早めに飲み切る必要があります。
清潔に洗った容器を使い、冷蔵庫で保存します。容器へ口を付けたまま飲んだり、継ぎ足したり、長時間常温に置いたりするのは避けましょう。
「必ず何日持つ」と一律にはいえません。商品の保存方法を確認し、におい、濁り、酸味などに違和感があれば飲まないでください。
なぜ日本の家庭では麦茶を冷蔵庫に常備するのか
麦茶が家庭に定着した理由は、健康面だけでは説明できません。
安く大量に作れ、食事を選ばず、家族で共有しやすい。さらに、冷蔵庫を開ければいつもの味があるという安心感もあります。麦茶は商品であると同時に、家庭で繰り返し作られる生活習慣なのです。
安く作れて家族全員が飲みやすい
ティーバッグ一つで大きなポットを作れる麦茶は、毎日の飲み物として使いやすい存在です。
無糖で、カフェインを含まず、味の主張も強すぎない。大人用と子ども用に別々の飲み物を用意しなくても、一つのポットを家族で共有しやすい特徴があります。
水ではなく麦茶を選ぶことに季節感がある
喉の渇きを潤すだけなら、水でも目的は果たせます。それでも麦茶を選ぶのは、香ばしさや色に夏の記憶が重なっているからでしょう。
冷蔵庫の麦茶、汗をかいた後の一杯、夏休みの水筒。繰り返された体験によって、麦茶の味は「夏らしさ」と結び付きます。
冷蔵庫の麦茶は「家庭の味」になった
麦茶には、みそ汁や煮物のような複雑な味付けはありません。それでも、濃さ、焙煎香、使う水、冷やし方によって、家庭ごとの印象が生まれます。
粒の麦をやかんで煮出した記憶を持つ人もいれば、水出しパックやペットボトルが当たり前の世代もいます。作り方が変わっても、冷蔵庫から注ぐという行為が家庭の風景として受け継がれてきました。
飲食店で麦茶が無料提供されることがあるのはなぜ?
日本のすべての飲食店が麦茶を無料で提供するわけではありません。しかし、一部の食堂、焼肉店、牛丼店などでは、水やお冷の代わりに麦茶が出されます。
麦茶は大量に作りやすく、無糖で食事に合わせやすいため、無料のサービス飲料として使いやすいと考えられます。日本で水やお茶が自然に出てくる背景には、飲食店で水やお冷が無料になった日本のお水文化も関係しています。
麦茶の海外の反応|外国人は味や文化をどう感じる?
海外では、麦茶は一般に barley tea と呼ばれます。
日本旅行や日本食を通して初めて飲む人もいますが、麦を煎って飲む文化は日本だけのものではありません。特に韓国のボリチャは広く知られています。
海外の反応を見ると、麦茶そのものよりも、「甘くない」「冷たい」「子どもも飲む」「食事と一緒に出る」といった飲まれ方が驚きにつながっています。
香ばしい味を「ロースト」「ナッツ」「コーヒーのよう」と感じる反応
英語で麦茶を説明する際には、roasted、toasty、nuttyといった言葉がよく使われます。焙煎した穀物の香りを、薄いコーヒーや焼いたパンに例える人もいます。
一方、茶葉の香りや渋みを想像して飲むと、穀物らしい風味を不思議に感じることもあります。好意的な反応だけでなく、「慣れない味」「焦げた風味に感じる」という受け止め方があるのも自然です。
甘くない冷たいお茶に驚く外国人もいる
英語圏の一部では、冷たいお茶といえば砂糖を加えたアイスティーが身近です。そのため、冷たいのに甘くない麦茶を意外に感じる人がいます。
日本では、麦茶はジュースの代わりというより、水に近い日常の飲み物です。食事と一緒に飲み、喉が渇いたときに飲み、子どもの水筒にも入れる。この位置付けの違いが、味以上に新鮮に映ります。
子どもも飲むノンカフェイン飲料として注目される
麦茶がチャノキの茶ではなく、カフェインを含まないことを知って驚く人もいます。
ただし、海外にもカフェインを含まない穀物茶やハーブティーがあります。「日本だけが子どもにカフェインを与えない」という話ではありません。家族共通の飲み物として麦茶が家庭に常備される点が、日本の生活文化として特徴的なのです。
麦茶は日本だけ?韓国のボリチャなど海外の大麦茶文化
麦茶は日本だけの飲み物ではありません。
韓国では、焙煎した大麦を煮出すボリチャが家庭や飲食店で親しまれています。中国にも大麦茶があり、東アジア以外でも焙煎穀物はコーヒー代用品などに使われてきました。
日本独自なのは大麦茶の存在そのものではなく、冷蔵庫に作り置きし、夏の家庭飲料や水筒の中身として共有してきた具体的な生活様式です。
日本の麦茶と韓国のボリチャの違い
日本の麦茶と韓国のボリチャは、どちらも焙煎した大麦から作る飲み物です。
日本では夏に冷やして飲むイメージが強く、ティーバッグやペットボトル商品が広く普及しています。韓国では家庭や飲食店で水の代わりに提供され、冷たくしても温かくしても飲まれます。
ただし、国ごとに一つの飲み方へ統一されているわけではありません。焙煎度、濃さ、提供温度は、商品、店、家庭によって異なります。共通する穀物茶文化が、それぞれの食生活に合わせて発展したと考えるのがよいでしょう。
まとめ|麦茶は日本の夏と家庭に根付いた生活文化
麦茶は、焙煎した大麦を湯や水で抽出するノンカフェインの飲み物です。
大麦は古くから日本で利用され、平安時代には炒った麦を湯水に溶く飲み方が記録されました。江戸時代には夏の夜に麦湯店が並び、昭和に冷蔵庫が普及すると、冷たい麦茶が家庭の定番になります。
麦茶が夏に飲まれるのは、冷たいからだけではありません。初夏に麦が実ること、香ばしい風味が食事に合うこと、大量に作り置きできること、琥珀色や氷の音まで涼しさを感じさせることが重なっています。
海外にも韓国のボリチャをはじめとする大麦茶文化があります。その中で日本の麦茶を特徴付けているのは、冷蔵庫や水筒、家族の食卓と結び付き、夏の記憶を作ってきたことです。
麦茶は、暑さをただ我慢するための飲み物ではありません。大麦を焙煎する知恵、暑い季節を心地よく過ごす工夫、家族が同じポットから飲む暮らしが重なって育った、日本の生活文化なのです。
麦茶に関するよくある質問(FAQ)
麦茶にカフェインは含まれていますか?
一般的な麦茶にはカフェインが含まれていません。チャノキの葉ではなく、もともとカフェインを含まない大麦を原料としているためです。ただし、ブレンド商品の場合は原材料表示を確認してください。
麦茶はなぜ夏に飲まれるのですか?
大麦の収穫期が初夏に重なること、江戸時代に麦湯が夏の飲み物として親しまれたこと、冷蔵庫の普及によって冷やした麦茶を作り置きできるようになったことなどが理由です。
麦茶は何からできていますか?
焙煎した大麦から作られます。日本では六条大麦が一般的ですが、二条大麦、はだか麦、もち麦などを使った商品もあります。
麦茶は水分補給に使えますか?
無糖でノンカフェインの麦茶は、日常的な水分補給に使いやすい飲み物です。ただし、大量に汗をかいたときは塩分なども失われるため、麦茶だけで熱中症対策が完結するわけではありません。
麦茶にはミネラルが多く含まれていますか?
含有量は商品や抽出方法によって異なります。麦茶だけで、汗によって失われたミネラルや電解質を十分補えるとは限りません。栄養成分表示を確認してください。
水出し麦茶と煮出し麦茶はどちらがおいしいですか?
好みによります。水出しはすっきりした味になりやすく、煮出しは香りや濃さを出しやすい傾向があります。商品に記載された方法で作るのが基本です。
作った麦茶は冷蔵庫で何日持ちますか?
容器の衛生状態や作り方によって変わるため、一律にはいえません。清潔な容器で冷蔵保存し、商品の案内に従って早めに飲み切ってください。においや濁りなどに違和感があれば飲まないようにします。
麦茶は子どもや妊娠中でも飲めますか?
ノンカフェインのため、子どもや妊娠中の人にも選ばれています。ただし、乳幼児には対象月齢や濃さを確認し、大麦アレルギー、持病、医療者からの食事指示がある場合は注意が必要です。
麦茶は日本だけの飲み物ですか?
日本だけではありません。韓国のボリチャ、中国の大麦茶など、東アジアを中心に焙煎大麦を飲む文化があります。
日本の麦茶と韓国のボリチャの違いは何ですか?
基本的にはどちらも焙煎大麦から作ります。日本では冷たい夏の飲み物という印象が強く、韓国では食事中の水代わりとして温冷を問わず飲まれます。ただし、具体的な作り方や提供温度は家庭や商品によって異なります。
