エッセイ

日本はなぜゴミ箱が少ない?撤去された理由と日本人のゴミの捨て方

日本はなぜ公共のゴミ箱が少ないのでしょうか。安全対策や回収コストなど撤去された背景、外国人観光客が困る理由、購入店・駅・商業施設を利用し、最後は持ち帰る日本人のゴミの捨て方を、調査と観光地の事例から解説します。
CoCoRo編集部

「日本にはゴミ箱が少ないのに、なぜ街はきれいなのか」

訪日外国人から、たびたび聞かれる疑問です。

日本人は街中にゴミ箱がないことに慣れています。しかし、ゴミが消えているわけではありません。買った店で処分する、商業施設や駅にあるゴミ箱を使う、飲料容器は専用の回収ボックスへ入れる。それでも捨てる場所がなければ、バッグに入れて持ち歩き、最後は自宅へ持ち帰ります。

つまり、日本人はすべてのゴミを家まで持ち帰っているのではなく、公共のゴミ箱だけに頼らず、捨てられる場所まで持ち歩いているのです。

一方、日本のゴミ箱が少ない理由を「日本人のマナーがよいから」や「地下鉄サリン事件で撤去されたから」の一言だけで説明することもできません。安全対策、不適切な利用、分別、回収費用など、複数の事情が重なっています。

この記事では、日本の公共ゴミ箱が少ない理由、外国人観光客が困っていること、そして日本人が外出先でゴミをどのように処理しているのかを考えます。

この記事の目次
  1. 日本は本当にゴミ箱が少ない?外国人観光客が困る理由
  2. 日本の街からゴミ箱が減った理由
  3. 日本人は外出先のゴミをどうしている?
  4. 「買った店で捨てる」は日本の暗黙のルールなのか
  5. 日本人はなぜゴミを持ち歩けるのか
  6. ゴミ箱を増やせば問題は解決するのか
  7. ゴミ箱が少ない日本は今後も維持できるのか
  8. まとめ|日本人はゴミ箱がなくても困らないのではなく、別の処理経路を使っている
  9. 日本のゴミ箱に関するよくある質問

日本は本当にゴミ箱が少ない?外国人観光客が困る理由

日本に住んでいると、街中にゴミ箱が少ないことをあまり意識しません。

ところが、海外から来た旅行者にとっては、日本を旅行中に直面する大きな不便の一つです。

訪日客の約7割が「公共のゴミ箱が少ない」と回答

2024年に新宿観光案内所とその周辺で、訪日外国人観光客251人を対象に行われた調査があります。

この調査では、初めて日本を訪れた人の70.9%、2回目以上の人の68.4%が、観光中のゴミ捨てで「公共のゴミ箱が少ない」と回答しました。

訪日経験を重ねれば、電車の乗り方や店での注文には慣れていきます。それでも、ゴミ箱の少なさに困る人の割合はほとんど変わっていません。

つまり、「日本のルールを知らないから困る」だけではなく、実際に捨てられる場所が見つかりにくいという問題があります。

同調査の詳しい結果は、「都市観光における訪日外国人観光客のごみ分別意識に関する研究」で確認できます。

「数が少ない」だけでなく設置場所も分かりにくい

同じ調査では、初訪日客の32.6%、リピーターの32.9%が「ゴミ箱の設置場所が不明瞭」と回答しました。

日本にもゴミ箱はあります。

駅の改札内、商業施設、フードコート、コンビニエンスストア、イベント会場など、特定の施設には設置されています。しかし、道路を歩いていれば一定間隔で見つかるとは限りません。

しかも、コンビニでも店舗によってはゴミ箱がなく、駅でも撤去されている場合があります。土地勘のない旅行者にとっては、「どこにあるのか予測できない」ことが、数の少なさ以上に大きな問題になります。

食べ物・包装・飲料容器のゴミで困りやすい

外国人観光客が分別に困ったゴミで最も多かったのは、食べ物に関係するゴミでした。

初訪日客の50.6%、リピーターの49.4%が、食べ物関連のゴミを挙げています。次いで、包装や飲料容器が多くなっています。

これは旅行中の行動を考えると自然です。

たこ焼き、串焼き、クレープ、アイスクリームなどを買えば、食べ終わった直後に容器や串が残ります。飲み物を買えば、空のペットボトルや缶を持ち歩くことになります。

外国人観光客が日本で食べ歩きを楽しむ理由の裏側では、食べ終えた容器をどこで処理するのかという問題も生まれているのです。

リピーターになると分別への戸惑いは減っていく

ゴミ箱の少なさに困る割合は、訪日回数によってほとんど変わりません。

一方、「ゴミの種類が分からない」と答えた割合は、初訪日客の45.3%からリピーターでは25.3%へ下がっています。「ゴミ分類が複雑」は30.2%から8.9%まで低下しました。

旅行者も、日本で何度かゴミを捨てるうちに、表示や分別方法を学んでいると考えられます。

日本人が迷わないように見えるのも、生まれつき正しく分別できるからではありません。家庭、学校、職場、駅などで何度も経験し、「この場所ではどこへ入れるか」を学んできた結果です。

日本の街からゴミ箱が減った理由

日本の公共ゴミ箱が少ない理由として、1995年の地下鉄サリン事件がよく挙げられます。

実際、安全対策は重要な背景です。しかし、日本中のゴミ箱が一つの事件を境に一斉撤去され、そのまま戻らなかったと説明するのは単純すぎます。

駅や公共空間では安全対策が重視されるようになった

駅や空港など、不特定多数の人が利用する場所では、ゴミ箱の中に危険物や不審物を隠される可能性があります。

地下鉄サリン事件や海外でのテロ事件を経て、鉄道事業者はゴミ箱を撤去したり、中身が見える透明な容器へ変更したり、設置場所を係員から確認しやすい位置へ移したりしてきました。

現在でも、大規模な国際会議や要人来日に合わせて、駅のゴミ箱やコインロッカーが一時的に封鎖されることがあります。

したがって、「安全対策で減った」という記憶は間違いではありません。ただし、それだけが現在の少なさを決めたわけではありません。

国際イベント時にはテロ対策で封鎖されることがある

オリンピック、、サミットなどの開催時には、主要駅の警備が強化されます。

このとき、ゴミ箱が一時的に利用停止となり、イベント終了後に再開される場合があります。私たちが「大きなイベントのときに駅のゴミ箱が消えた」と記憶しているのは、この一時的な措置です。

一方、封鎖をきっかけに利用状況や管理方法が見直され、以前と同じ場所へ戻らないケースもあります。

イベント時の封鎖と、長期的な撤去は分けて考える必要があります。

家庭ゴミの持ち込みや異物混入も問題になっている

公共ゴミ箱には、そこで生じたゴミだけが入るとは限りません。

家庭から持ち込まれた袋、施設で想定していない大型ゴミ、液体が残った容器などが捨てられると、回収量や清掃負担が増えます。分別されていなければ、回収後に人の手で対応しなければなりません。

設置者にとって、ゴミ箱は容器を置くだけの設備ではありません。不適切な利用を確認し、袋を交換し、周辺にあふれたゴミを清掃するところまでが運用です。

撤去には、安全性だけでなく、施設と関係のないゴミまで引き受け続けることの難しさも影響しています。

設置するだけでなく回収・清掃・分別にも費用がかかる

観光客が多い場所にゴミ箱を置けば、すぐ満杯になる可能性があります。

満杯のまま放置すれば、周辺への置き捨て、臭い、害虫、景観悪化につながります。回収頻度を増やせば、人件費や運搬費も増えます。

さらに、誰が費用を負担するのかという問題があります。

自治体、鉄道会社、商業施設、商品を販売した店舗、観光客。その全員がゴミの発生に関係しますが、管理責任を一者だけに負わせれば、継続は難しくなります。

日本のゴミ箱が少ない背景には、「置くか、置かないか」ではなく、誰が継続的に管理するのかという問題があるのです。

日本人は外出先のゴミをどうしている?

では、日本人は外出先で出たゴミを、実際にどこへ捨てているのでしょうか。

「すべて自宅へ持ち帰る」という説明は正確ではありません。日本人も、利用できるゴミ箱があれば使います。

買った店や飲食した場所で処分する

テイクアウト商品や屋台料理は、購入した店の近くで食べ、店が用意した回収場所へ容器を戻すことがあります。

ゴミ箱が見当たらない場合も、購入店へ「これを捨ててもらえますか」と確認すれば、店の商品から出たゴミを引き取ってもらえることがあります。

ただし、別の店や家庭で出たゴミまで持ち込んでよいという意味ではありません。日本では、「その場所で生じたゴミを、その場所の仕組みで処理する」という考え方が基本です。

商業施設・駅・イベント会場のゴミ箱を利用する

ショッピングモールや百貨店のフードコートでは、食器返却口やゴミ箱が用意されています。

駅にも、ホームや改札内に新聞・缶・ペットボトルなどの回収箱が設置されている場合があります。花火大会や祭礼では、開催期間だけ臨時ゴミ箱やエコステーションが置かれることもあります。

常に街頭のゴミ箱を探すのではなく、自分が利用している施設の中で処分場所を探す。日本人は無意識にこの探し方をしています。

飲料容器は自動販売機横などのリサイクルボックスへ入れる

自動販売機の横にある箱は、何でも捨てられる一般ゴミ箱ではありません。

その自動販売機などで販売された飲料の空容器を回収し、再資源化するためのボックスです。ペットボトル、缶、瓶など、表示された対象だけを入れます。

飲み残し、弁当容器、紙くず、家庭ゴミなどを入れると、回収やリサイクルの妨げになります。

日本人が自動販売機横の箱を「ゴミ箱」と呼ぶことはありますが、役割としては飲料容器の回収場所です。

捨てられる場所がなければバッグに入れて持ち歩く

ティッシュや菓子の包装など小さなゴミであれば、ポケットやバッグへ一時的に入れる人も多いでしょう。

濡れている物や食べ物の容器は、小さな袋に入れて他の荷物と分けます。

これは「街をきれいにするために特別な善行をしている」というより、捨てる場所がないための現実的な対処です。

ゴミが出た瞬間に処分できなくても、次の駅、店、施設まで持っていればよい。この時間差を当然のものとして受け入れている点が、ゴミ箱の多い国との違いなのかもしれません。

最後まで見つからなければ自宅へ持ち帰る

一日の外出中に適切なゴミ箱が見つからなければ、最終的に自宅まで持ち帰ります。

旅行中なら宿泊先へ持ち帰ることになります。

ただし、日本人があらゆる外出ゴミを必ず家まで持ち帰るわけではありません。

買った場所で捨てる。利用した施設で捨てる。飲料容器は専用ボックスへ入れる。それでも処分できなかった分だけ持ち帰る。この段階的な行動が実態に近いでしょう。

「買った店で捨てる」は日本の暗黙のルールなのか

商品を販売すれば、包装や容器のゴミも生まれます。

そのため、観光地では「観光客に持ち帰らせる」だけでなく、販売店が回収に関わる仕組みも作られています。

嵐山では地域ルールとして明文化されている

環境省の「観光地におけるごみのポイ捨て・発生抑制対策実績と改善の事例集」では、・嵐山の取り組みが紹介されています。

嵐山では「ごみは買ったお店で必ず捨てる」という地域ルールを多言語で伝えています。購入店へ容器を戻した人に、お守りやステッカーを渡して感謝を示す「ハートバック制度」も行われました。

単に「ポイ捨て禁止」と注意するのではなく、どこへ持っていけばよいのかを具体的に示した取り組みです。

店で回収する仕組みが食べ歩きのゴミを支えている

食べ歩きが盛んな場所では、商品を売るほど容器ゴミが増えます。

販売店が「店の前だけきれいならよい」と考え、食べ終わった後の容器を引き取らなければ、ゴミの処理先はなくなります。

日本の屋台文化も、祭りの主催者、露店商、自治体、清掃担当者などの協力によって成り立っています。屋台が並ぶ景色の裏側には、臨時ゴミ箱の設置や終了後の清掃があります。

公共ゴミ箱ではなく「ゴミが生まれた場所」で処理する

日本では、誰でも使える街頭ゴミ箱を増やす代わりに、商品を売った店や飲食スペースが、自ら発生させたゴミを回収する形が多く見られます。

この方法なら、何が捨てられるかをある程度予測できます。飲食店なら、その店の容器や串、紙ナプキンなどが中心です。回収対象が明確なため、分別もしやすくなります。

日本人が「コンビニ」「フードコート」「買った店」を処分場所として思い浮かべるのは、こうした限定的な回収の仕組みに慣れているからです。

店舗側の協力がなければ成立しない仕組みでもある

買った店へ戻す方法は、観光客のマナーだけでは成立しません。

店が回収場所を分かりやすく示し、スタッフが容器を受け取り、回収費用を負担する必要があります。商店街全体でルールを共有していなければ、「あの店では引き取るが、この店では断られる」という混乱も起こります。

日本の街がきれいに見える背景については、日本はなぜ清潔に見えるのかでも詳しく考察しています。ただし、清潔さは個人の道徳心だけでなく、ゴミを回収する店舗や施設の働きにも支えられています。

日本人はなぜゴミを持ち歩けるのか

ゴミ箱が見つからないとき、日本人はゴミを手に持ったまま、あるいはバッグへ入れて移動します。

なぜ、この行動が比較的自然に受け入れられているのでしょうか。

「今すぐ捨てる」ことを前提にしていない

ゴミ箱が多い都市では、ゴミが出ればすぐ近くで捨てられるという期待が生まれます。

日本では、その期待がそれほど強くありません。

「ここになければ次の駅で探す」「店に入ったときに捨てる」「なければ家へ持ち帰る」と、処分までの時間を延ばします。

日本人がゴミ箱の少なさにまったく困っていないわけではありません。すぐ捨てられない状況への対処に慣れているのです。

ポケットやバッグへ一時的に入れることに抵抗が少ない

レシートや包装紙をポケットへ入れ、帰宅後に見つけた経験がある人は多いでしょう。

これは整然としたマナーというより、日常的で少し雑な対処でもあります。しかし、その小さな行動によって、外出先の床や道路へゴミが残りにくくなります。

「ゴミは所有者の手を離れた瞬間に公共の問題になる」というより、「捨てられる場所が見つかるまでは自分の物」という感覚に近いのかもしれません。

高尾山では持ち帰り運動が約5年かけて定着した

日本人の持ち帰り習慣が、初めから自然に存在したわけではないことを示す事例もあります。

環境省の事例集によると、高尾山ではレジャーブームによる利用者増加で、設置されたゴミ箱からゴミがあふれ、周囲に散乱していました。

そこで1975年頃から「ごみ持ち帰り運動」が始まり、約5年をかけて徐々に浸透しました。

「日本人は昔から必ずゴミを持ち帰っていた」という説明では、この変化を捉えられません。呼びかけ、清掃、地域の協力を何年も続けることで、新しい利用者にもルールが引き継がれてきたのです。

マナーだけでなく、繰り返しによって身についた行動である

日本人の公共マナーは、罰則や道徳教育だけで支えられているわけではありません。

周囲の人が持ち帰るのを見る。学校行事で自分のゴミを持ち帰る。施設の表示に従う。何度も繰り返すうちに、外出先でゴミを放置しない行動が習慣になります。

この点は、日本人が礼儀正しいと見られる理由とも共通します。礼儀正しさを国民性だけで説明するのではなく、摩擦を減らす共通ルールを日常の中で学んできた結果として見る必要があります。

ゴミ箱を増やせば問題は解決するのか

外国人旅行者の約7割がゴミ箱の少なさに困っているなら、もっと設置すればよいと思うかもしれません。

しかし、環境省の事例を見ると、問題は設置台数だけではありません。

ゴミ箱があっても場所が分からなければ使われない

富士吉田市内にスマートリサイクルボックスを設置した事例では、観光客から「ゴミ箱を見つけるのが難しい」という意見が出ました。

ゴミ箱を設置しても、旅行者の移動経路から外れている、案内が見えない、地図に表示されていないといった状態では利用されません。

どこに置くか、どこで存在を知らせるかまで含めて設計する必要があります。

公共ゴミ箱では短時間で分別を判断しなければならない

家庭でゴミを捨てる場合は、自治体の分別表を調べたり、次の回収日まで保管したりできます。

公共ゴミ箱の前では、手に持った容器をどこへ入れるか、その場で判断しなければなりません。

公共ゴミ箱の利用行動を扱った研究では、正しい分別には、利用者の事前知識、表示の理解、瞬間的な判断が関係すると指摘されています。

日本人でも、油の付いた紙、素材が混ざった容器、キャップと本体など、分類が分からないゴミはあります。外国人だけが分別できないのではなく、ゴミ箱側の表示にも改善の余地があります。

表示を細かくしすぎると、かえって負担が増える

分別を正確にしようとして、説明を細かくすればよいとも限りません。

文字を増やし、分類を細分化すると、利用者が読む負担も増えます。急いでいる人が判断を諦めたり、適当な投入口へ入れたりする可能性があります。

「燃える・燃えない」のような抽象的な分類だけでは迷います。一方で、あまりに細かい規則も使いにくい。

写真、色、投入口の形、多言語表示などを組み合わせ、短時間で判断できるようにする必要があります。

多言語表示・投入口・回収体制を一緒に設計する必要がある

訪日客調査では、PETボトルの識別マークは比較的理解されていました。

「PET」という英字が使われ、ボトルの形も想像しやすいためです。一方、「紙」「プラ」、スチール缶、アルミ缶など、日本語や日本独自の表示に依存するマークの正答率は低くなりました。

表示を多言語化するだけでなく、実物の絵を使う、投入口を容器の形に合わせる、飲み残しを捨てる場所を用意するなど、言葉に依存しない設計が有効です。

さらに、正しく分別されても、満杯になる前に回収できなければ意味がありません。表示、容器、回収は一つの仕組みとして考える必要があります。

スマートごみ箱・有料ごみ箱という新しい試み

宮島口では、ゴミの蓄積状況を把握できるスマートごみ箱や、飲み残し専用ボックスが設置されました。富士吉田でも、スマートリサイクルボックスによる分別と散乱防止が試されています。

谷川岳では、有料ごみ箱を設置する実証も行われました。費用を払って捨てる人がいた一方、有料であることによって持ち帰りを選ぶ行動も確認されています。

誰でも無料で使えるゴミ箱だけが答えではありません。

商品価格、観光税、広告、利用料、自治体予算など、回収費用をどのように負担するかまで含めた試行が始まっています。

ゴミ箱が少ない日本は今後も維持できるのか

公共ゴミ箱を限定し、利用した施設で処分し、残りは持ち帰る。

この仕組みは、利用者と店舗が暗黙のルールを共有している間は機能します。しかし、訪日客と食べ歩きが増えた観光地では、従来の前提が揺らいでいます。

インバウンドと食べ歩きで従来の仕組みに負荷がかかっている

旅行者は、どの店がゴミを回収してくれるのかを知りません。

買った場所から歩きながら食べれば、食べ終わったときには店から離れています。店へ戻ろうとしても、混雑した道を引き返すのは簡単ではありません。

「日本では持ち帰るのが常識」と伝えるだけでは、観光中の現実的な処理先を示したことになりません。

観光客のマナーだけを原因にするのは適切ではない

ポイ捨てが増えると、外国人観光客のマナーが批判されることがあります。

しかし、訪日客調査が示しているのは、捨てたい人にも「ゴミ箱がない」「場所が分からない」「分類が理解できない」という問題があることです。

ルールを守る意思があっても、処理経路が見えなければ正しく行動できません。

もちろん、ゴミ箱がないから路上へ捨ててよいわけではありません。ただし、マナー啓発と同時に、迷わず利用できる回収場所を整える必要があります。

店舗・自治体・観光客で処理コストをどう分担するか

観光による売上は店舗へ入りますが、路上に残されたゴミの清掃は自治体や地域住民が担うことがあります。

一方、すべての処理費用を小さな店舗へ負担させれば、回収を続けられません。

販売店による回収、商店街の共同ゴミ箱、自治体の回収、観光税の活用、イベント主催者による臨時設備など、場所に合わせた分担が必要です。

持ち帰り文化とゴミ箱整備を両立させる必要がある

ゴミ箱を増やせば、すべての人が正しく捨てるとは限りません。ゴミ箱を減らせば、必ず持ち帰ってもらえるとも限りません。

持ち帰れる小さなゴミは持ち帰る。飲食物を販売した場所では回収する。人が集中する観光地やイベントでは、必要な場所へ一時的にゴミ箱を設置する。

日本の街を支えるのは、「ゴミ箱を置かない」という一つの方法ではなく、複数の処理経路を組み合わせることです。

まとめ|日本人はゴミ箱がなくても困らないのではなく、別の処理経路を使っている

日本の公共ゴミ箱が少ない背景には、安全対策、不適切な利用、分別の難しさ、回収・清掃費用など、複数の事情があります。

日本人も、ゴミ箱がなければ不便を感じます。

それでも、買った店、商業施設、駅、イベント会場、飲料容器専用の回収ボックスなど、公共の街頭ゴミ箱とは異なる処理先を使っています。適切な場所が見つからなければ、しばらく持ち歩き、最後は自宅へ持ち帰ります。

この習慣も、日本人に生まれつき備わっているわけではありません。高尾山の持ち帰り運動のように、地域の呼びかけと実践を長く続けることで定着したものがあります。

一方、訪日客が増えた現在、従来の暗黙のルールだけでは対応しにくくなっています。

大切なのは、「日本では持ち帰るのがマナー」と旅行者だけに負担を求めることではありません。ゴミが生まれる場所、捨てる場所、回収する人、費用を負担する人をつなぎ、初めて訪れた人にも分かる処理経路を作ることです。

街の清潔さは、ゴミ箱の数だけでも、一人ひとりの善意だけでも決まりません。ゴミが発生してから回収されるまでの仕組み全体によって保たれているのです。

日本のゴミ箱に関するよくある質問

日本にゴミ箱が少ないのは地下鉄サリン事件が原因ですか?

安全対策が強化され、駅などでゴミ箱の撤去や変更が進んだ背景の一つです。ただし、現在の少なさは、安全対策だけでなく、家庭ゴミの持ち込み、異物混入、分別、回収費用など複数の事情によるものです。

日本人は外出先のゴミを家まで持ち帰るのですか?

すべてを家まで持ち帰るわけではありません。買った店、商業施設、駅などの適切なゴミ箱を利用し、飲料容器は専用回収ボックスへ入れます。それでも処分場所がなければ持ち帰ります。

コンビニのゴミ箱へ捨ててもよいですか?

その店舗を利用して出たゴミで、店にゴミ箱が設置されていれば、表示に従って捨てられます。他店や家庭から持ち込んだゴミを捨てる場所ではありません。店舗によってはゴミ箱を設置していない場合もあります。

自動販売機横の箱には何を入れられますか?

表示されたペットボトル、缶、瓶などの飲料空容器を入れます。一般ゴミ箱ではないため、弁当容器、紙くず、家庭ゴミなどは入れられません。

日本のゴミ箱を増やせばポイ捨ては減りますか?

適切な場所への設置はポイ捨て抑制に役立つ可能性があります。ただし、場所の案内、分かりやすい分別表示、満杯になる前の回収、管理費用まで設計しなければ、ゴミの散乱や異物混入を招くこともあります。

CoCoRo編集部
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