同じホテルなのに日によって料金が大きく変わることに、戸惑ったことはないでしょうか。ホテルの料金は、立地や設備そのものの原価だけでなく、その部屋をどれだけの人が求めているかという需要の見込みによって日々調整されています。立地の良さや人気の高さは、この需要の見込みを左右する材料の一つであって、料金を自動的に決める単一の要因ではありません。
ただし、立地が良ければ必ず高額になる、人気が高ければ必ず満室になるという単純な図式でもありません。稼働率が高くても客単価が低ければ収益は伸びず、逆に立地条件が控えめでも独自の需要をつかんで高い評価を得ている施設もあります。ここでは料金・立地・人気がどのように関係しているかを整理します。
そこで本記事では、宿泊料金の決まり方を、立地や時期、需要の観点から解説していきます。予約のタイミングを見極めたい方は、ぜひご参考にしてください。
この記事でわかること
- 宿泊料金の決まり方に法令上の規制があるのかどうか
- 料金が日によって変わる仕組み
- 立地や時期が価格に反映される理由
- 予約のタイミングを判断する考え方
なぜホテルの料金は日によって決められているのか
ホテルの料金が固定されず日々見直されるのは、客室という商品が売れ残ればその日の分は二度と販売できないという性質を持つためです。レベニューマネジメントとは、宿泊需要や予約状況に応じて料金や販売する部屋数を調整し、収益を最大化しようとする考え方のことです。
旅館業法にも旅館業法施行令にも、宿泊料金の決め方を規制する条文はありません。料金の決まり方は法令ではなく、各施設が需要に応じて価格を調整するレベニューマネジメントという手法にもとづきます。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2026年5月の客室稼働率は全体で61.0パーセントでした。稼働率が高まる時期ほど価格は上がりやすくなります。
稼働率と客室単価という2つの指標で管理されている
ホテル業界では、販売可能な客室のうちどれだけが実際に販売されたかを示す客室稼働率と、販売された客室の平均的な価格を示す平均客室単価という2つの指標を組み合わせて運営が行われています。この2つを掛け合わせた指標は、1室あたりの収益を表す数値として使われ、稼働率を高く保つことだけでなく、いくらで部屋を埋めるかという単価の管理も同時に重視されているとされています。
予約が集中する時期ほど価格の調整幅が大きくなる
予約が集中しやすい時期や、周辺でイベントが開催される期間は、需要の見込みが高くなるため、料金の調整幅も大きくなる傾向があります。反対に予約が入りにくい時期は、空室を減らすために料金が見直される傾向があります。こうした日々の価格変動の具体的な仕組みについては、別記事で詳しく取り上げています。
立地と人気は宿泊需要の大きさと結びついている
立地と人気が料金に影響するのは、それ自体が需要の大きさを左右する要素になっているためです。駅や観光地からの距離、眺望の良さといった条件は、宿泊者がその部屋にどれだけの価値を感じるかに直接関わってきます。
アクセスの良さは需要の底堅さにつながる傾向がある
主要駅や空港、観光地の中心部に近い施設は、移動の負担が少ないという理由で選ばれやすく、年間を通じて一定の需要を保ちやすい傾向があります。一方で、郊外や地方に立地する施設でも、独自の景観や体験を提供することで、アクセスの不利を補って高い人気を得ている例があります。立地の良し悪しだけで人気や料金が一義的に決まるわけではありません。
宿泊需要全体は年々変化している
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2024年の年間延べ宿泊者数は6億5,906万人泊で、新型コロナウイルス流行前の2019年と比べて10.6パーセント増加し、前年からも6.7パーセント増加しました。このうち外国人の延べ宿泊者数の伸びが大きく、外国人が占める割合は過去最高の水準まで上昇しています。宿泊需要全体が拡大している局面では、立地や人気にかかわらず全体の稼働率が底上げされやすくなる点も、料金水準に影響する要素の一つです。
人気が高いホテルほど必ず高額という通説を検証する
人気が高く稼働率の高いホテルほど、必ず料金が高いという理解は、レベニューマネジメントの考え方とは食い違います。稼働率と客室単価は別々に管理される指標であり、どちらか一方だけを見て料金の高さを判断することはできません。
稼働率100パーセントでも収益が最大化されているとは限らない
ホテル経営の考え方では、客室が満室になる稼働率100パーセントの状態であっても、その価格設定が低すぎれば収益が最大化されているとはいえないとされています。あえて満室にせず、単価を維持したまま部屋を残すという判断がとられる場合もあり、埋まっているかどうかと、料金が高いかどうかは、必ずしも同じ方向を向いた指標ではありません。
人気の高さが必ずしも最高値の料金設定を意味しない施設もある
宿泊者からの評価が高く予約が集まりやすい施設であっても、リピーターの獲得や口コミによる集客を重視し、あえて価格を抑えた戦略をとる場合があります。人気の高さと料金の高さは相関する場面が多いものの、それを唯一の法則として一般化することはできません。
旅行者がこの仕組みをどう活かせるか
ホテルの料金が需要の見込みで決まる仕組みを理解しておくと、予約のタイミングを選ぶ際の判断材料になります。人気の施設でも、需要が集中しない時期を選べば、立地や設備の水準に対して割安に感じられる料金で予約できることがあります。
立地だけを基準に施設を絞り込むのではなく、宿泊人数や滞在目的に対して部屋の広さや設備が見合っているかを確認したうえで、複数の候補を比較することが、料金と満足度のバランスを取りやすい選び方になります。
まとめ
- ホテルの料金は原価だけでなく、需要の見込みにもとづくレベニューマネジメントによって日々調整されています。
- 立地や人気は宿泊需要の大きさを左右する要素であり、料金を単独で決める要因ではありません。
- 観光庁の調査では2024年の延べ宿泊者数が過去最高となり、宿泊需要全体の拡大が稼働率や料金水準に影響しています。
- 稼働率と客室単価は別の指標であり、人気が高いホテルが必ず最も高額とは限りません。
参考資料
- 観光庁『宿泊旅行統計調査(2024年・年間値(確定値))』: 宿泊旅行統計調査(2024年・年間値(確定値))
- 観光庁『宿泊旅行統計調査(統計データ一覧、2026年8月時点)』: 宿泊旅行統計調査
関連記事:ホテルの歴史や語源、種類や旅館との違いをまとめて分かりやすく解説/ホテルの宿泊料金が日によって変動する仕組みと賢い予約タイミングの考え方


