ホテルの雑学

ホテルでバスとトイレが分かれている客室が増えた背景を解説

ホテルでバスとトイレが分かれている客室が増えた背景を解説
CoCoRo編集部

同じ価格帯でも、バスとトイレが分かれている部屋とそうでない部屋があります。なぜ違いが生まれるのか、気になったことはないでしょうか。ホテルでバスとトイレが別になっている客室があるのは、浴槽とトイレと洗面をひとつの空間にまとめるユニットバス形式が普及したあと、宿泊者の快適性を重視してバスルームとトイレを独立させる設計を選ぶ施設が増えてきたためです。分離型は法律で定められた仕様ではなく、各ホテルが客室のグレードや利用シーンを踏まえて採用している設計判断にあたります。

ただし、現在のホテルがすべて分離型に切り替わったわけではありません。省スペースで導入しやすいユニットバス形式は、ビジネスホテルを中心に今も数多く使われています。バス・トイレ別とユニットバスのどちらが多数派かを示す業界全体の公的な統計は確認できておらず、価格帯や築年数によって傾向が分かれるとしか言えません。

そこで本記事では、分離型と一体型が併存している理由を、法令と工法の記録から解説していきます。部屋選びの参考にしたい方は、ぜひご参考にしてください。

この記事でわかること

  • バスとトイレを分けることが法令上の義務にあたるのかどうか
  • 一体型のユニットバスがいつどんな事情で生まれ、どこまで普及したのか
  • 分離型と一体型で必要な面積や料金がどう変わるのか
  • 予約時に客室の形式を確認する方法

なぜホテルにユニットバスと分離型の両方があるのか

ホテルにユニットバスと分離型の両方が存在するのは、それぞれが解決してきた課題が異なるためです。ユニットバスとは、浴槽・洗い場・トイレ・洗面をあらかじめ一体成形したパーツで構成し、現場で組み立てる浴室工法のことです。工期短縮とコスト効率を重視する客室で選ばれやすく、バス・トイレを壁で仕切る分離型は、快適性やプライバシーを重視する客室で選ばれやすい傾向があります。

ユニットバスは短工期と防水性のために開発された

住宅設備メーカーTOTOの公式発表によると、業界初のユニットバスルーム工法は1963年に開発され、1964年の東京オリンピックに合わせて開業した日本初の超高層ホテルであるホテルニューオータニに納入されました。在来工法では現場でタイルを貼って浴室を仕上げていたのに対し、あらかじめ成形したパーツを組み立てる方式にしたことで、工期を在来工法のおよそ10分の1に短縮し、1044室分の浴室を3.5カ月で仕上げたと公表されています。ステンレス製の防水パンを採用したことで、従来必要だった浴室の防水工事も不要になりました。

分離型は宿泊者の使い勝手を重視した設計判断

複数人での宿泊や連泊では、入浴中にトイレを使えないことがストレスになりやすいという指摘があります。バスとトイレを分けておけば、同室の同行者が同時に別の水回りを使えるため、身支度の時間を短縮できます。この使い勝手の向上を理由に、分離型の客室を売りにするホテルが増えてきました。ただし、分離設計を義務づけた法令や基準は確認できておらず、採用するかどうかは各ホテルの裁量です。

ユニットバスがホテルや住宅の標準になった経緯

ユニットバスがホテルや住宅の標準設備として広がったのは、東京オリンピック向けの一時的な工法ではなく、その後の集合住宅需要に対応する形で製品化が続いたためです。

ホテル向けから集合住宅向け、戸建向けへ広がった

TOTOの公式情報によると、ホテル向けに開発されたユニットバスルームは、1966年にマンションやアパートなど集合住宅向けの製品として発売され、1977年には戸建住宅向けの製品も発売されました。2024年2月時点で累計出荷台数が1200万台を突破し、現在は日本の浴室のおよそ9割がユニットバスルーム工法になっていると公表されています。ホテルの客室で使われている浴室の多くも、この住宅設備業界の技術を土台にしています。

ビジネスホテルで今も採用され続ける理由

限られた床面積で客室数を確保する必要があるビジネスホテルでは、ユニットバスのコンパクトさと施工コストの低さが今も強みになっています。分離型に改装するには床面積と給排水設備の見直しが必要になるため、既存のユニットバス客室をそのまま維持している施設は少なくありません。新しいホテルほど必ず分離型になるとは言い切れず、立地やターゲット層によって設計方針が分かれます。

分離型が主流になったという説を検証する

近年のホテルはバス・トイレ別が主流になったという説明を見かけますが、これを裏づける業界全体の公的な統計は確認できていません。実際には価格帯や客室タイプによって採用状況が大きく異なります。

宿泊予約サイトが専用の検索項目を用意している

大手旅行会社の宿泊予約サイトには、バス・トイレ別の客室だけを集めた特集ページが用意されています。これは、バス・トイレ別を条件に部屋を探す宿泊者が一定数存在することを示す状況証拠にはなりますが、全国のホテルにおける分離型の割合や増加率を示す統計調査ではありません。特集ページの存在を、分離型が多数派である根拠として扱うことはできません。

客室改装で分離型に切り替える施設もある

客室のリニューアルにあわせてユニットバスから分離型へ変更するホテルもあり、快適性を高める改装の一例として紹介されています。一方で、改装を行わずユニットバスのまま運営を続ける客室も数多く残っています。分離型への切り替えは、老朽化に伴う改装のタイミングや客室単価の設定と結びついた個別の経営判断であり、業界全体が一律に分離型へ移行しているとは言えません。

分離型でも間取りにはいくつかの種類がある

バス・トイレ別と一括りに呼ばれる客室にも、浴槽とシャワーとトイレをすべて別室にする完全分離型と、トイレだけを分ける準分離型があり、呼び方や間取りは施設によって異なります。同じ分離型という表記でも、実際の広さや動線は予約前に写真や説明で確認しないと分かりません。

バス・トイレ別かどうかを予約時にどう確認するか

連泊や複数人での宿泊でバス・トイレ別を重視する場合は、客室タイプの説明や間取り図を予約前に確認するのが確実です。表記だけでは完全分離型か準分離型かまで分からないことがあるためです。

宿泊予約サイトの検索条件でバス・トイレ別を絞り込める場合は活用すると効率的です。条件で絞り込めない場合は、客室タイプ名や設備一覧のページで、浴室とトイレが独立しているかどうかを確認してください。バスタブの深さやシャワーの配置、鏡や照明の使い勝手は分離型かどうかとは別の要素で、これらはホテルのバスタブの深さやシャワー位置に隠された使いやすさで扱っています。

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まとめ

  • ホテルでバスとトイレが別になっている客室があるのは、宿泊者の快適性を重視した各施設の設計判断によるものです。
  • ユニットバスは1964年の東京オリンピックに向けてホテルニューオータニ向けに開発された工法で、その後住宅用として広く普及しました。
  • 分離型が全国のホテルで主流になったと確認できる公的な統計はなく、価格帯や築年数によって採用状況は分かれます。
  • バス・トイレ別を確実に選びたい場合は、予約前に客室タイプの説明や間取り図で分離の範囲を確認しておくと安心です。

参考資料

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