ホテルの引き出しを開けて聖書を見つけ、なぜあるのだろうと思ったことはないでしょうか。ホテルの客室に聖書が置かれているのは、国際ギデオン協会という団体が、聖書を読み親しんでもらうことを目的に、無償でホテルへ贈呈し備え付けているためです。自殺防止が主な目的だと語られることがありますが、この団体が公表している設立目的としては確認できません。
すべてのホテルに聖書があるわけではなく、仏教聖典を置く施設もあります。持ち帰りについては、ギデオン協会が贈呈した聖書に関しては自由に持ち帰ってよいという見解を団体自身が示していますが、ホテルの備品全般に当てはまる話ではない点には注意してください。
そこで本記事では、聖書が置かれる経緯と、語られている通説の確かさを分けて解説していきます。客室の備品の由来が気になる方は、ぜひご参考にしてください。
この記事でわかること
- 聖書を客室に届けている団体と、その目的
- 設置が法令上の義務にあたるのかどうか
- 自殺防止が目的だという説がどこまで確かめられるのか
- 持ち帰りの可否についての考え方
聖書が客室に置かれる理由
客室の聖書の多くは、国際ギデオン協会という団体からホテルへ贈られたものです。ギデオン協会とは、聖書の贈呈と備え付けを通じて伝道活動を後援することを目的に掲げる、日本を含む世界各地で活動するキリスト教関連団体を指します。
聖書とは、キリスト教で正典とされる文書をまとめた書物のことです。旅館業法にも旅館業法施行令にも、客室に書物を備えることを定めた条文はありません。聖書の設置は法令上の義務ではなく、施設と贈呈団体の合意にもとづく任意の取り組みです。
起源は1898年のホテルでの出会いにある
取材記事によれば、ギデオン協会の起こりは1898年、米国ウィスコンシン州のホテルで2人のビジネスマンが偶然相部屋になったことにさかのぼります。2人とも聖書を大切にしていたことをきっかけに、ホテルに宿泊するビジネスマンがいつでも聖書を読めるよう備え付けようという発想が生まれ、1899年に協会が発足しました。ホテルへの聖書贈呈自体は1908年、米国モンタナ州のホテルに25冊を贈ったのが最初とされています。
日本でも1950年から活動している
日本国際ギデオン協会の公式サイトによれば、聖書を一人でも多くの人に読み親しんでもらうことを目的に、ホテルや病院などへの備え付けを続けており、活動は世界200を超える国と地域に及んでいます。取材記事では、日本国内では1950年から活動を開始し、これまでに約4000万冊を贈ってきたと紹介されています。
聖書がない客室や仏教聖典が置かれる例もある
客室に必ず聖書があるとは限りません。日本では、聖書のかわりに仏教の教えをまとめた聖典を備え付けているホテルや旅館もあります。
仏教伝道協会が仏教聖典を配布している
公益財団法人仏教伝道協会の公式サイトでは、仏教の教えを現代の言葉でまとめた仏教聖典を、世界の主要ホテルの客室や学校、図書館、病院、福祉施設へ寄贈していると説明されています。同協会が発行する日英対訳の仏教聖典は1966年に刊行され、現在も世界のホテルへ無償で配布されているとされています。聖書と同じように、宗教団体からの寄贈を受けて客室に置いている点は共通していますが、発行する団体も内容もまったく別のものです。
どちらもない客室も存在する
聖書や仏教聖典の備え付けは、あくまで各ホテルが団体からの贈呈を受け入れているかどうかに左右されます。開業の経緯や客室のコンセプトによっては、どちらも置いていない客室があっても不思議ではありません。
自殺防止が主目的というのは正確か
客室の聖書は自殺防止のために置かれているという説明を見かけることがありますが、ギデオン協会が公表している設立目的や活動説明には、自殺防止を主目的とする記述は見当たりません。公式に確認できる目的は、聖書を読み親しんでもらうための伝道活動です。
公式サイトで確認できる目的は伝道活動
日本国際ギデオン協会の公式サイトやよくある質問のページでは、聖書の贈呈と備え付けの事業を通じて伝道活動を後援することが目的として説明されています。自殺防止という言葉そのものは、同協会が公開している説明文の中では確認できませんでした。
悩みに関する案内ページの存在は確認が取れていない
聖書の中に、つらいときに読むページを案内する目次が設けられているという説明も広く語られています。しかし、この記述を公式サイトの一次情報で確認することはできませんでした。聖書の版によって収録内容が異なる可能性もあり、断定的な事実として扱うことは避けています。
ホテルが廃業したときの聖書の扱い
取材記事によれば、ホテルが廃業する際に備え付けの聖書を返却したいという申し出を受けることがあり、その場合は協会が引き取り、傷み具合を確認したうえで、ホテルや旅館以外で必要としている人たちに渡しているとされています。廃棄が前提の備品ではなく、役目を終えたあとも活用される仕組みがあることがうかがえます。
持ち帰りについて知っておきたいこと
ギデオン協会が贈呈した聖書については、団体自身が持ち帰りを前提とした説明をしています。ただし、これはあくまでこの聖書に限った話です。
信者でない人に配ることも目的の一つとされている
ギデオン協会に取材した記事によれば、客室の聖書は気軽に持ち帰ってよいという回答が得られています。理由として、信者でない人にも聖書を配ることを目的の一つとしているため、持ち帰りは想定の範囲内だと説明されています。
迷う場合はフロントに確認すると安心
協会としては持ち帰りを認めていても、個々のホテルが独自のルールを設けている可能性はゼロではありません。備品の管理方針は施設ごとに異なるため、確実に確認したい場合はチェックアウト前にフロントへひとこと伝えておくと安心です。仏教聖典についても、持ち帰り可否を明記した一次情報は確認できていないため、同じようにフロントで確認することをおすすめします。
まとめ
- 客室の聖書は、国際ギデオン協会が伝道を目的に無償でホテルへ贈呈し備え付けているものです。
- 自殺防止が主目的だという説明は、協会が公表している設立目的としては確認できませんでした。
- 日本では仏教伝道協会が仏教聖典を同じように客室へ寄贈している例があり、聖書と役割が重なります。
- ギデオン協会の聖書は持ち帰りを想定しているとされていますが、施設ごとのルールが気になる場合はフロントに確認すると安心です。
参考資料
- 一般財団法人日本国際ギデオン協会公式サイト『よくあるご質問(2026年8月時点)』: よくあるご質問
- 公益財団法人仏教伝道協会公式サイト『よくある質問(2026年8月時点)』: よくある質問
- オトナンサー『ホテルの机や書棚に「聖書」、なぜ置いてある? 廃業したら、行く先は?(2021年1月24日)』: ホテルの机や書棚に「聖書」、なぜ置いてある?
- QuizKnock『ホテルに置いてある聖書って持って帰って良いの?(2026年8月時点)』: ホテルに置いてある聖書って持って帰って良いの?
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